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『ゆきてかへらぬ』根岸吉太郎監督 撮影までの数年間がもたらしたもの【Director’s Interview Vol.473】

『ゆきてかへらぬ』根岸吉太郎監督 撮影までの数年間がもたらしたもの【Director’s Interview Vol.473】

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田中陽造が40年以上前に書いたオリジナル脚本『ゆきてかへらぬ』。それは、多くの監督やプロデューサーが映画化を熱望しながらも叶うことのなかった幻の脚本だった。それが名匠・根岸吉太郎監督の強い意志により遂に実現されることになる。近年は大学で映画を教えていた根岸監督だったが、本作『ゆきてかへらぬ』は実に16年ぶりの新作となった。根岸監督はいかにして本作を作り上げたのか。話を伺った。



『ゆきてかへらぬ』

京都。まだ芽の出ない女優、長谷川泰子(広瀬すず)は、まだ学生だった中原中也(木戸大聖)と出逢った。20歳の泰子と17歳の中也。どこか虚勢を張るふたりは互いに惹かれ、一緒に暮らしはじめる。価値観は違う。けれども相手を尊重できる気っ風のよさが共通していた。東京。泰子と中也が引っ越した家を、小林秀雄(岡田将生)がふいに訪れる。中也の詩人としての才能を誰よりも知る男。そして、中也も批評の達人である小林に一目置かれることを誇りに思っていた。男たちの仲睦まじい様子を目の当たりにして、泰子は複雑な気持ちになる。才気あふれるクリエイターたちにどこか置いてけぼりにされたようなさみしさ。しかし、泰子と出逢ってしまった小林もまた彼女の魅力に気づく。本物を求める評論家は新進女優にも本物を見出した。そうして、複雑でシンプルな関係がはじまる。重ならないベクトル、刹那のすれ違い。ひとりの女が、ふたりの男に愛されること。それはアーティストたちの青春でもあった。


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若手カメラマン儀間眞悟とのタッグ



Q:16年振りの映画製作はいかがでしたか。


根岸:あんまり進歩してないなと(笑)。学生に映画を教えていたので自分なりに勉強はしていました。それまで観てなかった映画を観たり映画の歴史を勉強したり、それで映画がわかったつもりになっていました。ちょっとは上手くなっているかなと期待したのですが、何も変わってなかった(笑)。ただ、変わってなかったけれど忘れてもいなかった。進歩は無かったけれど後退もしてなかった感じですね。


撮影は1年半以上前に終わっていたのですが、そこから公開までの間、「こうすれば良かったかな?」「ああすれば良かったかな?」と、山のように頭をよぎるんです。結局大して進歩してなかったんだなと(笑)。



『ゆきてかへらぬ』© 2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会


Q:今回のスタッフには若手カメラマンの儀間眞悟さんが入っています。


根岸:今までと同じスタイルではなく自分に新しいものを付け加えたかった。若い人が持っているポテンシャルが演出する上で刺激になるかなと。儀間くんが撮影した阪本順治さんの『一度も撃ってません』(19)などは、芝居を撮るフレームが的確。こういう感覚でフレーミングできる人とやってみたかったんです。


長年一緒にやってきた照明の長田達也さんも「儀間くんとは是非やってみたかった」と言ってくれました。そこも良い組合せでしたね。ちなみに、美術をお願いした原田満生さんも阪本組の常連です。今回そういう意味では阪本組の力を借りているのかもしれません(笑)。





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