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© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures.
『ブルータリスト』ブラディ・コーベット監督 建築の迫力をビスタビジョンで捉える【Director’s Interview Vol.474】
建築の迫力をビスタビジョンで捉える
Q:なぜそれほどビスタビジョンにこだわったのでしょうか。
コーベット:本作は50年代が舞台であるため、この時代に生み出されたビスタビジョンのフォーマットで撮るのは自然だと思いました。しかも建築という壮大なものがテーマゆえに、その迫力を捉えるにはビスタビジョンが適している。僕と撮影監督のロル・クローリーはヒッチコックの『めまい』(58)や『北北西に進路を取れ』(59)といった作品を念頭に置いていました。あるいは60、70年代でもビスタビジョンで撮られた傑作はあります。今村昌平の『 復讐するは我にあり』(79)などもそうですね。とはいえフィルムの現像液は当時のものとは違うため、そこにはどうしてもモダンな質感が入り込んできます。その混合感も面白いと思いました。
『ブルータリスト』© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures.
Q:映画に出てくるラースローの設計する建築ですが、とても壮大で神秘的です。あれは本当に建てられたものなのでしょうか?
コーベット:いえ、まず巨大なミニチュアを作りそこにいろいろなテクニックを駆使して撮りました。巨大なミニチュアというのはまあ、僕の家のリビングルームぐらいの大きさで、その後ろにデジタルで拡張した巨大なファサードを作りました。最初からすべてを CGI で作るのではなくこのようにした理由は、コンクリートの質感や鉱物感、そして光や影やスケールなど、少なくともフレームを支配する何かリアルなものを作りたかったからです。コンクリートには一種の侘び寂びのような資質がある。とてもユニークなもので、それはデジタルで作成するのが非常に難しい。説得力をもたらすためには、適した素材を用いてまずミニチュアを作る必要があると思いました。もちろん、360 度ではない、ファサードだけのセットもありました。そうやって経済的に可能な方法を見つけて撮影したのです。
Q:威風堂々として、本物にしか見えなかったです。
コーベット:それは大変光栄な言葉です。僕にとっては、『2001年宇宙の旅』(68)より説得力のある映画は思いつきません。あの宇宙船のスケール感は素晴らしい。宇宙船ほど大きくはないものの、本作でもスケール感はあると思います。率直に言って僕らが用いた方法は、今日使用されるCGIのツールよりもはるかに効果的な結果になったと思います。