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『ブルータリスト』ブラディ・コーベット監督 建築の迫力をビスタビジョンで捉える【Director’s Interview Vol.474】
この役にはブロディしかいない
Q:ラースローに扮したエイドリアン・ブロディについてですが、彼はロマン・ポランスキー監督の『戦場のピアニスト』(02)でも、ホロコーストを体験したユダヤ人に扮しました。彼自身はあの映画の経験と今回の経験について、何か繋がるものを感じていたと思いますか。
コーベット:じつは僕らもその点に大変感銘を受けたのですが、彼と話し合ったとき、エイドリアン自身、『戦場のピアニスト』のためにおこなった何年にもわたる調査と生存者との会話が、20数年後に今回の映画でやっていることにとても影響を与えたと語っていました。あの映画を撮ったとき、彼はまだ20代、そして今は51歳です。あの映画の経験は、彼の骨の髄まで染み付いていて、それがラースローという人間を作る上で大きなインスピレーションになったのです。わたし自身は、当時公開されて以来、『 戦場のピアニスト』は観直していなかったのですが、瓦礫の中を彼が歩く象徴的なシーンなど、たくさんのイメージをいまでも鮮烈に覚えています。
『ブルータリスト』© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures.
それ以外にも、たとえば彼がアーサー・ミラーに扮したアンドリュー・ドミニク監督の「ブロンド」(22)での演技も忘れられません。僕にとって彼は何か別の時代の俳優のようなエッセンスがあります。現代の俳優では非常に少数の人しか持っていない何か。しかも彼の母親はハンガリー人で1956年の動乱から逃れアメリカに渡ってきたという背景があり、彼はまさにこの役にふさわしい唯一の俳優でした。本作はコロナ禍の影響で中断され、結果的に7年もかかりましたが、エイドリアンは迷うことなく、本作に身を捧げてくれました。
また彼を取り巻く俳優たちも素晴らしかった。フェリシティ・ジョーンズ、ガイ・ピアース、ジョー・アルウィン、アレッサンドロ・ニヴォラなどーー彼らはこの物語の真髄をよく理解していました。本当に素晴らしいアンサンブルだったと思います。