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『ブルータリスト』ブラディ・コーベット監督 建築の迫力をビスタビジョンで捉える【Director’s Interview Vol.474】
映画とはパブリック・アート
Q:先ほどキューブリックの映画の話が出ましたが、『ブルータリスト』は7年の制作期間、ビスタビジョン、3時間35分の上映時間といった規格外の要素が、まさにキューブリックを彷彿させます。その大胆さと執念はどこからくるのでしょうか。
コーベット:アーティストというのは、作家でも画家でもミュージシャンでも映画監督でも、常に自分が生きている時代を反映するものです。僕もその例に漏れないわけですが、映画産業はここ20年ぐらい勢いを失い、映画がどんどん退屈になっていると思います。もちろん例外もありますが、そう多くはない。それは監督たちが映画制作に興味を失っているからではなく、映画産業がそれをサポートしない状況になっているから。正直、いまは配信の影響でとても複雑になっている。
では観客の映画に対する関心が失せたのでしょうか? 僕はそうは思いません。去年を振り返れば、『オッペンハイマー』(23)や『関心領域』(23)といった作品は世界的にヒットした。後者は特にとてもラジカルな映画です。つまり人々の映画に対する興味が失せたわけではなく、映画館で観たいと思わせるような作品が減っているのだと思うのです。
『ブルータリスト』© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures.
僕にとって映画とはいわばパブリック・アート。つまり人々はそれを愛したり嫌ったり、落書きをしたり、小便をかけようとしたり、さまざまな反応があるわけです。人々がどんな反応をしてそこに何を投影するかは、僕にとってとても興味深い。そうした反応を含めて映画産業をもっと盛り上げていくために、人々が映画館で観たいと思うような作品を作っていきたいと思うのです。
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監督/共同脚本/製作:ブラディ・コーベット
1988年8月17日生、アメリカ・アリゾナ州出身。俳優、声優、映画監督、脚本家、プロデューサーなど多方面で活動している。長編映画の監督デビュー作『シークレット・オブ・モンスター』 (15) は、 ヴェネツィア国際映画祭にてプレミア公開され非常に高い評価を得ると、オリゾンティ賞や新人監督に与えられるルイジ・デ・ラウレンティ ス賞を受賞した。2作目の「ポップスター』 (18) はヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門正式出品作として高い評価を得た。俳優としては、「サーティーンあの頃欲しかった愛のこと』 (03) でスクリーンデビュー。 そのほか主な出演作に、『ファニーゲーム U.S.A.』 (08)、『メランコリア』 (11) 、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』 (14) などがある。
取材・文:佐藤久理子
パリ在住、ジャーナリスト、批評家。国際映画祭のリポート、映画人のインタビューをメディアに執筆。著書に『映画で歩くパリ』。フランス映画祭の作品選定アドバイザーを務める。
『ブルータリスト』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国上映中
配給:パルコ ユニバーサル映画
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