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撮影監督は『ブルータリスト』をどう観たのか⁉︎ 山田康介 × 彦坂みさき × 山本周平 撮影監督鼎談【CINEMORE ACADEMY Vol.37】

向かって左から撮影監督の山田康介氏、彦坂みさき氏、山本周平氏

撮影監督は『ブルータリスト』をどう観たのか⁉︎ 山田康介 × 彦坂みさき × 山本周平 撮影監督鼎談【CINEMORE ACADEMY Vol.37】

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建築物をビスタビジョンで撮る意義



Q:本作は建築を芸術として捉える一面もあります。実際に様々なアングルを駆使して建築物を捉えていますが、印象に残ったアングルはありましたか。


彦坂:宣伝ビジュアルで使われている火花が飛んでいるシーンや、冒頭で青空が見えるシーンなど、“あおり”が多い印象がありました。


山本:作りかけの柱の前を人が歩いているシーンがまるで絵画のようでした。かなり意識して作った画だと思いますが、柱をそのまま作るのは難しいでしょうから多分VFXも入っているのだろうなと。


彦坂:建物の建設過程をタイムラプスで見せたりもしていましたよね。あそこの画質は16ミリぽい雰囲気もありましたが、どうやって撮っているのか知りたいですね。



『ブルータリスト』© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures.


Q:本日はIMAXでの鑑賞でしたが、自分が撮った映画がIMAXなどの大きなスクリーンで上映されることに対して何か思いはありますか。


山田:僕は自分で撮った作品が一度だけIMAXでかかったことがあるのですが(『シン・ゴジラ』)、通常のスクリーンとは違う迫力で観ることが出来て嬉しかったですね。IMAXへの変換工程は一切秘密で見せてもらえず劇場でチェックするだけなのですが、それでも観たときはやっぱり感動しました。


Q:今回はビスタビジョンで撮っているからこそIMAXで映えた部分もあります。


彦坂:今回はIMAXでしかも画角がヨーロピアンビスタ(1.66:1)。どうしてかなと思っていましたが、建築物や“顔の寄り”がちょうどよく収まるからなんだろうなと。映画を観て改めて思いました。


山本:建築物を撮るのに普通の35ミリフィルムだとすごいワイドレンズで撮らなきゃいけない。それがビスタビジョンのラージフォーマットだと長め(望遠)のレンズで撮ることができる。そこは良いところだなと。


山田:建築物はどうしても直線が多いので、ワイドレンズで撮るとそれが歪みとして出てきちゃう。直線を直線として描くためには、やっぱり長いレンズで撮らなきゃいけない。ビスタビジョンみたいなラージフォーマットだとそこを上手く捉えられる。“あおり”も多かったので、ワイドレンズだけで撮ると先細りみたいな画になっちゃうんです。


山本:多分すごくフィルムでやりたかったのでしょうね(笑)。フィルムが大好きなんだろうなと。


彦坂:ロケ地のハンガリーはなんと言ってもタル・ベーラの国ですから。


Q:では最後の質問です。影響を受けた映画や好きな撮影監督を教えてください。


山本:僕はロジャー・ディーキンスが好きです。ライティングを突き詰めている人なので、彼が撮る画はデジタルとフィルムの違いをあまり感じないんです。とにかくライティングがすごい。影響を受けた映画は『セブン』(95)で、撮影はダリウス・コンジがやっています。ちょうど先日IMAXで上映されていましたが、映画館で『セブン』を観たのは初めてだったので衝撃を受けましたね。


彦坂:初めてミニシアターで観た映画がジム・ジャームッシュの『デッドマン』(95)でした。モノクロがすごく綺麗で、「こういう映画もあるんだなぁ」と。撮影したロビー・ミューラーってすごいと思いました。『ダウン・バイ・ロー』(86)や『パリ、テキサス』(84)などを撮っていたと思えば、『奇跡の海』(96)みたいな柔軟な撮り方もする。素敵だなと思います。


山田:僕はもう散々いろんなところで言ってきましたが、やっぱり『セブン』のダリウス・コンジですね。カメラマンという職業を初めて意識したのが、高校時代に『セブン』を観たとき。そこからずっとダリウス・コンジを追いかけている感じです。



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向かって左から山田康介氏、彦坂みさき氏、山本周平氏


山田康介 Kosuke Yamada

東宝映画に入社後、『劔岳 点の記』など数多くの撮影助手経験を経て、『神様のカルテ』で撮影監督に。『シン・ゴジラ』で第40回日本アカデミー賞最優秀撮影賞受賞。2019年フリーに転身、映画作品を多数手がけている。主な作品に『羊と鋼の森』、『ディア・ファミリー』、Netflix『幽☆遊☆白書』、『さよならのつづき』など。最新作にNetflix『匿名の恋人たち』


彦坂みさき Misaki Hikosaka

日大芸術学部映画学科卒業後、主に藤澤順一氏に師事し経験を積み、2014年撮影技師に。主な作品に映画『Ribbon』、『雨降って、ジ・エンド』、『プリズン13』などの他、山戸結希監督のNHKBS藤子・F・不二雄SF短編ドラマ『おれ、夕子』やドレスコーズMV『襲撃』など、ドラマ、MV、CM作品も多数手がける。


山本周平 Shuhei Yamamoto

日本映画学校(現・日本映画大学)卒業後、撮影助手として経験を積む。主にCM、M V、映画などのフォーカスプラーとして現場を重ね、映画『ケンとカズ』で撮影技師に。主な作品にNHKドラマ『岸辺露伴は動かない』、映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』、『辰巳』『アングリースクワッド』など。オールイタリアロケの『岸辺露伴は動かない 懺悔室』が公開待機中。



アングル・ピクチャーズ

1994年に映画監督の佐藤信介と撮影監督の河津太郎によって映像制作レーベルとしてスタート、現在では、クリエーティブ業界のより良い発展に寄与したいという想いのもと、映像業界を中心にクリエイターマネジメントも行い、実力ある撮影監督をはじめとして15名のクリエイターを擁する。本記事に登場した、山田氏、彦坂氏、山本氏も所属している。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『ブルータリスト』

TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開中

配給:パルコ ユニバーサル映画

© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED.

© Universal Pictures.

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