
向かって左から撮影監督の山田康介氏、彦坂みさき氏、山本周平氏
撮影監督は『ブルータリスト』をどう観たのか⁉︎ 山田康介 × 彦坂みさき × 山本周平 撮影監督鼎談【CINEMORE ACADEMY Vol.37】
距離で合わせるフォーカス
Q:最近のデジタルカメラもどんどん解像度が上がってきています。カメラマンにとって高解像度のカメラを使うということはどのような意味があるのでしょうか。
山田:それぞれの作品によりますね。その作品にとって解像感が必要かどうかということもありますが、今回の『ブルータリスト』に関しては、フィルムで撮った上での解像感を大事にしたかったのではないでしょうか。デジタルの高解像度なものだと少し生っぽい感じになってしまうのですが、そうじゃない何かをフィルムの解像感に求めたのかなと。
Q:高解像度のフィルムというと、クリストファー・ノーランがIMAXカメラで使っている65ミリフィルムが思い浮かびます。ただ、今回の『ブルータリスト』は製作費約1,000万ドルで撮られていることもあり、その点でも35ミリフィルムを上手く使って高解像度を得たようにも思われます。
山田:横使いする35ミリフィルムは通常の縦使いに比べて倍ぐらいフィルムが回りますが、それでも65ミリフィルムに比べると全然安いと思います。
『ブルータリスト』© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures.
Q:フィルムの解像度が高いと被写界深度との関係も出てきますね。
彦坂:フォーカスは大変そうでしたね(笑)。フォーカスが来てないところが所々ありました。
山田:結構引き画でもボケてたよね(笑)。
山本:でもフィルムだからそれもちょっと心地良い(笑)。
彦坂:フォーカスが合ってなくて曖昧でもそれが味になる。
山本:あれがデジタルだとボケた感じがスパッと来るというか、ちょっと嫌な感じになるときもあるのですが、フィルムのおかげかもしれません、すごくいい感じになってました。
Q:解像度が高くなってくるとフォーカスを合わせるのは難しいのでしょうか。
山田:難しいですね。あとフィルムの場合は、そのままの画がモニターに反映されないので、モニターで合わせることができない。フォーカスプラー*が目と距離で合わせていくしかないんです。今の時代の人からするとなかなか難しいでしょうね。
*フォーカスプラー:ピント合わせをメインの仕事としている撮影助手
Q:ラースローがプレゼンするシーンでは、並んで立っているハリソン父子にカメラが寄っていくのですが、父子とも横に並んでいるにも関わらず、父にはフォーカスが合っていますが子の方は若干ボケています。
山本:たぶん本当に紙一重の距離なんでしょうね。そういう絶妙な被写界深度ってあるんです。それを合わせるのはすごく大変ですね。