監督として手に負えないことに挑戦し続けたい!
Q:上田監督が作品を作っていく中で映画監督として守りたいポリシーのようなものはありますか?
上田:たぶん、最後まで「じたばたする」ってことですかね。「しょうがない」って思わない。ちょっと今回は諦めようというか、それなりのものを撮ろうみたいな感じで監督をしないっていうこと。考え続けろっていうことじゃないですかね。
今回も、無名の僕と俳優とで、勝負をかける長編を作るっていう時に、やっぱ70点ぐらいのものを作ってしまうのが一番駄目だなと思ったんですよ。だから0点か200点かみたいな。やっぱ挑戦と不安がある、わくわくと不安が半々ぐらいがちょうどいいんですよね。「これ、できんのか?」っていう手に負えないようなことをしないと、映画とは言いがたいんじゃないかっていう気持ちがあって。
Q:監督自身も余裕があってはいけないと?
上田:そうですね。これからも、自分の手に負えないことに挑戦をしていきたいなっていうのはありますね。そつなくこなす事にはなりたくないし、「こだわりを持たない」っていうこだわりもちょっとあるんですよ。つまり、こだわりがあると身動き取れなくなる時があるじゃないですか。だから今は「俺、生涯コメディーを撮っていく」って言ってますけど、5、6年後には、「やっぱ俺シリアスな社会派撮るわ」って言うかもしれないじゃないですか。常に変わり続けたいなっていうのはありますね。
Q:『カメラを止めるな!』の製作費は300万円で、自主映画の延長に近い現場だったと思います。その製作環境がプラスに働いたと思われますか?
上田:はい。低予算でも、無名の俳優でも面白いもの、ヒット作はできるじゃないかって書いている人も結構いるんですが、いやいや、低予算だから、無名の俳優だからできたんだっていうのは強く言いたい。メジャーにはできない戦い方をしたからだっていう。
Q:確かに。これが全部有名な役者さんだったら、こんな作品にならないですよね。
上田:だからお金があったらあったで、そのときの戦い方があるでしょうし。でもやっぱり瀬々敬久監督みたいなスタイルがいいなって思いますね。『64』(16)みたいなのもやるし、『菊とギロチン』(18)みたいな規模のもやるしっていう。メジャーも、インディーズもやるみたいなのができたら一番うれしい。
無名で不器用な俳優が集まったからこそ、独自の作品世界の構築に成功した、という『カメラを止めるな!』。次回の後篇では、ストーリーの細部に触れながら、主人公の設定に込めた思いや、作品全体に秘められた意外なメッセージまでを、ネタバレ全開で上田監督が明かします!
監督・脚本・編集 上田慎一郎
1984年 滋賀県出身。中学生の頃から自主映画を制作し、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。2010年、映画製作団体PANPOKOPINAを結成。現在までに8本の映画を監督し、国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得。2015年、オムニバス映画「4/猫」の1編「猫まんま」の監督で商業デビュー。妻であるふくだみゆきの監督作「こんぷれっくす×コンプレックス」(2015年)、「耳かきランデブー」(2017年)等ではプロデューサーも務めている。「100年後に観てもおもしろい映画」をスローガンに娯楽性の高いエンターテイメント作品を創り続けている。本作が劇場用長編デビュー作となる。
主な監督作:短編映画 「ナポリタン」(2016年)、「テイク8」(2015年)、「Last WeddingDress」(2014年)、「彼女の告白ランキング」(2014年)、「ハートにコブラツイスト」(2013年)、「恋する小説家」(2011年)、長編映画「お米とおっぱい。」(2011年)。
取材・文:稲垣哲也
TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)など。現在、ある著名マンガ家のドキュメンタリーを企画中。
『カメラを止めるな!』
2018年6月23日(土)より新宿K’s cinema、池袋シネマ・ロサにて公開!
配給:ENBUゼミナール
(C)ENBUゼミナール