『ロングレッグス』オズグッド・パーキンス監督　なぜ人は怖い映画を観るのか 【Director’s Interview Vol. 478】

ニコラス・ケイジは最高の映画スター

Q：連続殺人鬼役にニコラス・ケイジを起用した理由をお聞かせください。

パーキンス：ニコラス・ケイジは昔から大好きな俳優のひとりでした。映画史に残る史上最高の映画スターだと思います。表現もエネルギーも超人的で、恐れることなく自分の全てを映画に捧げている。映画を愛し、映画を称えるためならなんでもしたいと考えているんです。

彼は映画そのものを、ハリウッドの空に輝くサーチライトを、「ハリウッド万歳」（※）を、マリリン・モンローを、マーロン・ブランドを崇拝しています。ホラー映画の伝統にも詳しく、ロン・チェイニーやボリス・カーロフ、ベラ・ルゴシ、私の父であるアンソニー・パーキンスを尊敬していました。ある時、ニックが「子どものころ、ジェームズ・ディーンやマーロン・ブランド、モンゴメリー・クリフト、アンソニー・パーキンスが大好きだった」と話してくれたことはとてもうれしかったですね。

（※）アカデミー賞授賞式などで世界的に知られる「映画」の代名詞的名曲。映画『聖林ホテル』（37）のためにリチャード・A・ホワイティングが作曲した。

『ロングレッグス』© MMXXIII C2 Motion Picture Group, LLC. All Rights Reserved.

Q：ロングレッグスという象徴的なホラー・キャラクターを、ニコラス・ケイジと一緒にどう作っていきましたか？　即興演技やアドリブも多いのでしょうか。

パーキンス：即興演技は一切なく、すべてが脚本通りです。実は、ニックに「脚本のことは忘れてほしい」と早い段階で提案したんですよ。「僕が書いたことは言わなくていい、ゴミだと思って捨ててほしい」と。そうしたら「君の書いた通りにやる。脚本を読んで引き受けたんだから」と言ってくれた。本当にうれしかったですね。そのかわり、撮影が始まる前にニックと一緒に脚本のセリフを調整しました。ニックは「このセリフは言いたくない」とは言わず、「ちょっと別の単語だといいな」という感じ。繊細な作業でしたがやりがいがあり、大きな自信になりました。本当に素晴らしい方で、私は幸運だったと思います。

T・レックスとの共鳴と調和