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『ロングレッグス』オズグッド・パーキンス監督 なぜ人は怖い映画を観るのか 【Director’s Interview Vol. 478】

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『ロングレッグス』オズグッド・パーキンス監督 なぜ人は怖い映画を観るのか 【Director’s Interview Vol. 478】

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T・レックスとの共鳴と調和



Q:緻密に構築された映画なので、脚本通りに演じないという選択肢を与えていたことに驚きました。いつも俳優にはそれくらいの自由度を与えているんですか?


パーキンス:私の仕事は、できるかぎり最高の脚本を書き、最高のキャストとスタッフを雇い、そして彼らに任せることだと思っています。演技とは、役者が自分の根底に潜り込み、本質や精神を発見し、役柄の人生や真実を表現することで他者と分かち合う行為。車の運転などとは違って、誰かが指導できるものではありません。


だから私は役者に干渉しないし、怒鳴らないし、嫌な気分にさせようとも考えない。言ってしまえば、彼らのやり方には関心がないのです。ただし、自分が見たものを監督する仕事ではありますから、とにかくじっと見ているし、素晴らしい演技ならばそう伝えるし、よりよく見えるよう工夫しています。


自分のアイデアは役者に植えつけるものではなく脚本に含まれるべきもの。そのために、いつも膨大な量のあらすじを予め書いておき、脚本の執筆中は逆にあらすじの要素を取り除いていくのです。そうすると物語の本質だけが残り、その背景に意味が生まれる。俳優は、人物の感情を言葉にするのではなく、役柄の背景や秘密を演じたいと思うものです。現実の人間が本心を口にすることなんてめったにありませんから。



『ロングレッグス』© MMXXIII C2 Motion Picture Group, LLC. All Rights Reserved.


Q:劇中では、オープニングから流れるT・レックスの楽曲も印象的です。


パーキンス:映画のアイデアを考え、脚本を書くときはオープンな状態でありたいんです。身の回りにある、自分よりもはるかに大きな存在に耳を傾けたい。それらを「宇宙的なもの」や「詩的なもの」と言っても、「インスピレーション」とか「源泉」と呼んでもかまいませんが、とにかく私は自分が見ているものが何なのか、子どもたちや妻が何を言っているのか、近くにいる人がどんな表情をしているか、横並びに座っている2人はどんな関係なのか――そういうことをじっと観察しています。


『ロングレッグス』ではT・レックスがそんな存在でした。アイデアに熱中していたとき、T・レックスの音楽が流れてきて、直感的に「これだ」と思ったんです。そこでT・レックスをいつも聴くようになり、共鳴と調和が生まれてきた。「君は痩せて弱々しい、ヒドラの歯が生えている(You're slim and you're weak. You've got the teeth of the Hydra upon you)」という歌詞に美しさと恐ろしさを感じ、ちょうど読んでいた「ヨハネの黙示録」の海獣につながった。そこから先はクロスワードパズルと同じです。





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