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『ロングレッグス』オズグッド・パーキンス監督 なぜ人は怖い映画を観るのか 【Director’s Interview Vol. 478】

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『ロングレッグス』オズグッド・パーキンス監督 なぜ人は怖い映画を観るのか 【Director’s Interview Vol. 478】

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「10年で最も怖い映画」と呼ばれた、スリラー×ホラー映画『ロングレッグス』。ひとりの女性捜査官が謎の連続殺人事件を追ううち、恐怖の連鎖とおぞましい真実が暴かれてゆく物語だ。タイトルロールの殺人鬼・ロングレッグス役にはニコラス・ケイジが扮し、見たこともない怪演で観る者を圧倒した。


世界中で大ヒットを記録した本作を手がけたのは、『呪われし家に咲く一輪の花』(16)のオズグッド・パーキンス監督。『サイコ』(60)でノーマン・ベイツ役を演じたアンソニー・パーキンスの息子として生まれ、幼少期から現在まで俳優としても活動。近年はジョーダン・ピール監督『 NOPE/ノープ』(22)にも出演している。


現代ホラー映画界の新たな旗手として注目される気鋭に、本作が生まれるまでと創作哲学、そして「なぜ人間は怖い映画を観るのか」を聞いた――。



『ロングレッグス』あらすじ

1990年代半ば、オレゴン州。FBI支局に勤める新人捜査官のリー・ハーカーは並外れた直感力を買われ、重大な未解決事件の担当に抜擢される。ごく平凡な家族の父親が妻子を殺害したのち、自ら命を絶つ。そのような不可解な殺人事件が過去30年間に10回も発生していた。いずれの現場にも侵入者の痕跡はなく、“ロングレッグス”という署名付きの暗号文が残されていたのみ。“ロングレッグス”とは一体何者なのか。真相に迫ろうとするハーカーは暗号文を解読し、事件にある法則を見出すが、その正体も行方も依然としてつかめない。だがやがてハーカーの過去とロングレッグスの意外な接点が浮上し、事件はさらなる恐ろしい事態へと転じていくのだった...。


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『羊たちの沈黙』×『セブン』×『CURE』



Q:とても恐ろしく、最後までどこに導かれるのか予測できない映画でした。この物語が生まれたきっかけを教えてください。


パーキンス:独自の視点を持つインディペンデントの映画監督にとって、今は非常に厳しい時代です。お金にならないと思われたら、まず映画を作ることはできない。そこで脚本を書く時、たくさんの人に観てもらえる映画にしようと決意しました。Netflixに潰されかねない今こそ、忘れられない映画を作らなければいけないと。


「観客はどんな映画を観たいのか? そこに新しく提案できるものはあるか?」。そう考えた時、思い浮かんだのが『羊たちの沈黙』(91)と『セブン』(95)でした。どちらも現実の殺人事件を描いた映画ではなく、一種のファンタジーだからこそ美しい。昔から大好きな『羊たちの沈黙』の世界を再び観客に体験してもらえるとしたら、いったい何ができるのか……。そこで『 羊たちの沈黙』を意図的に模倣しました。新人捜査官は仕事に向いていない、上司は向いているが事件を解決できない。また、新人捜査官は目の前に並んだ証拠を見つめる。「これは『羊たちの沈黙』ですよ」と宣言しつつ、ある一線を超えて以降はオリジナルの映画に仕上げる計画だったのです。



『ロングレッグス』© MMXXIII C2 Motion Picture Group, LLC. All Rights Reserved.


Q:映画の序盤、FBI捜査官のリー・ハーカーが民家に踏み込むシーンでも明らかですが、黒沢清監督『CURE』(97)の影響もありますよね。


パーキンス:その通りです。『CURE』は『羊たちの沈黙』や『セブン』と並んで、当初から参照していた作品でした。連続殺人鬼と超自然的な現象を組み合わせると、陰惨でグロテスクなはずのものがエレガントになる。『 CURE』を観る以前から、「どうしてそういう試みをする人があまりいないんだろう?」と考えていたので、「いつか自分でもやってみたい」と。非常に大きな影響を受けた作品だと言えます。





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