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『ロングレッグス』オズグッド・パーキンス監督 なぜ人は怖い映画を観るのか 【Director’s Interview Vol. 478】
なぜ人は恐ろしい映画を観るのか?
Q:最後にお尋ねしたいのは、「なぜ人は恐ろしい映画を観るのか?」ということです。世界中で恐ろしい現実が起きている今、なぜ私たちは映画館でも怖いものを観たがるのか。本作では「たくさんの人に観てもらえる映画」を目指したとのことですが、ご自身の考えをお聞かせください。
パーキンス:ホラーには、ありとあらゆる“目に見えないもの”が含まれています。「大切なもの、価値あるものは目に見えない」という言葉がありますが、ホラーというジャンルは、私たちが理解できないもの、感じてはいるけれど認識していないもの、恐ろしいけれど対処できないものを扱っている。そうした物語に触れて不安や恐怖をかき立てることは、ある意味でそれらを抑える方法でもあります。いったん認識した不安や恐怖は、車を運転していても、ベッドで横になっていても、家族と過ごしていても消えません。今は本当に恐ろしい時代で、現実に恐ろしいことがあちこちで起きている。私たちは、不安と恐怖が至るところにあることを知っていますよね。
『ロングレッグス』© MMXXIII C2 Motion Picture Group, LLC. All Rights Reserved.
人類が小さなカプセルを火星に送り、「人間とはこういうものだ」と伝える日が来るのなら、私はホラー映画をその中に入れるべきだと思います。「私たち人類は、自らの生み出した恐怖に対処するためにホラー映画を必要としていた」と言うべきなのです。
思い返せば、『ローズマリーの赤ちゃん』(68)はとても恐ろしく、けれども美しい映画でした。『顔のない眼』(60)や『赤い影』(73)、『シャイニング』(80)、それから『 吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)と『ドラキュラ』(92)も美しかった。最後に勝利するのは美しいものだ――そう私は信じているのです。
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監督/脚本:オズグッド・パーキンス
1974年生まれ。アメリカ ニューヨーク州出身。エマ・ロバーツ主演、A24製作『フェブラリィ~消えた少女の行方~』(2015)で監督デビュー。『呪われし家に咲く一輪の花』(2016)では、ルーシー・ボーイントンとルース・ウィルソンを主演に迎えた。『グレーテル&ヘンゼル』(2020)から4年ぶりの本作は監督第4作目となる。俳優としても活躍しており『キューティ・ブロンド』(2001/ロバート・ルケティック監督)では、リース・ウィザースプーン、ルーク・ウィルソンと共演。『セクレタリー』(2002/スティーヴン・シャインバーグ監督)、クリス・パイン主演の大ヒットSF映画『スター・トレック』(2009/J・J・エイブラムス/監督)、『NOPE/ノープ』(2022/ジョーダン・ピール監督)に出演している。
取材・文:稲垣貴俊
ライター/編集者。主に海外作品を中心に、映画評論・コラム・インタビューなどを幅広く執筆するほか、ウェブメディアの編集者としても活動。映画パンフレット・雑誌・書籍・ウェブ媒体などに寄稿多数。国内舞台作品のリサーチやコンサルティングも務める。
『ロングレッグス』
3月14日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
配給:松竹
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