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『ロングレッグス』オズグッド・パーキンス監督 なぜ人は怖い映画を観るのか 【Director’s Interview Vol. 478】

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『ロングレッグス』オズグッド・パーキンス監督 なぜ人は怖い映画を観るのか 【Director’s Interview Vol. 478】

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脚本執筆はクロスワードパズル



Q:劇中には暗号や聖書、悪魔、人形といったホラー映画らしい要素が盛り込まれつつ、鮮やかにまとめ上げられていきます。これほどの情報量を操るために、どのようなプロセスで執筆を進めましたか。


パーキンス:脚本の執筆には、自分がやりたいことを整理する方法が不可欠です。私の場合はニューヨーク・タイムズのクロスワードパズルと同じ。最初は「なんてことだ、何ひとつわからない」と思いますが、しばらくして「裸のランチ」の作者がウィリアム・バロウズだったことを思い出すと、次の答えもわかる気がしてくる。この映画の場合は『羊たちの沈黙』を最初に決めていたので、「それならクラリス・スターリング的な人物を出したい」、さらに「魅力的な殺人鬼といえば『 セブン』だな」と考えていきました。ある程度のピースが揃ったら、あとは思い切って書くだけです。頭の中でどのようにピースがつながったのかはわからないけれど、いったんパズルを解きはじめれば完成させるのは簡単です。



『ロングレッグス』© MMXXIII C2 Motion Picture Group, LLC. All Rights Reserved.


Q:映画の根底には「家族」というテーマがあります。監督の言葉を借りれば、それはパズルを解くなかで発見したものですか? それとも最初から見えていた答えでしたか。


パーキンス:私が作る映画は、すべて自分自身の存在が核心にあるべきだと考えています。作品の核にあるものを私が信じられれば、それ以外の部分がどれだけ大胆で、魔術的で、超自然的であろうとも、すべて真実だと思えます。自分がいったい何をしているのかを見落とさずにすむ。執筆中はたくさんのアイデアが出てきますが、「これは自分の話だ」と思える瞬間が絶対に必要です。


本作では「母親と子どもの関係」が核になりました。母親が子どもに嘘をつくことを決断する、それは私の生い立ちにおける真実だったのです。母は、父が隠していたアイデンティティから私と弟を守るために嘘をついた。私の父親はゲイで、それは家族が日常生活のなかで許容できるものではありませんでした。母は悪意ではなく善意から、私たちへの愛情から嘘をつき、望みもしないフィクションを作り上げたのです。そのような真実が核にあるからこそ脚本を書ける。自分に嘘をつきながら執筆を進めることはできません。





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