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『ベイビーガール』ハリナ・ライン監督 これは“欲望”の映画ではない【Director’s Interview Vol.480】

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『ベイビーガール』ハリナ・ライン監督 これは“欲望”の映画ではない【Director’s Interview Vol.480】

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己の苦しみに向き合う



Q:ニコール・キッドマンが脚本を気に入ったと聞きましたが、共同作業のなかで作品が変化したところはありますか。


ライン:脚本はほとんど変わっていません。彼女はとても熱心で、この映画を心からやりたがってくれました。ご本人の言葉を借りれば、彼女は「映画」に戻りたがっていたのです。しばらくテレビやストリーミングの仕事をしていて、それも素晴らしかったけれど、再び映画監督に自分を委ねたいのだと。スタンリー・キューブリックと仕事をした頃のように――もちろん私は比較されるような存在ではありませんが――素晴らしい映画を作りたかったと言っていました。ニコールはすべて脚本通りに演じてくれましたが、なにしろ世界最高級の才能なので、そのまま演じてもすべてが変わっていきます(笑)。映画を別次元に引き上げる魔法を見ているような気分でした。



『ベイビーガール』© 2024 MISS GABLER RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.


Q:ホラー映画だった『BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』(22)に続き、ジャンル映画で自身のテーマを問うことに惹かれる理由はなぜですか?


ライン:私がこだわるのは、己に向き合い、自分の苦しみにとことん正直であること。そして苦しみから解放されることです。『BODIES BODIES BODIES』で描きたかったのは集団の有害性であり、やはり内なる獣性でした。その“獣”のせいで、人は暴力的になり、恐ろしい行為に手を染め、性的な行為に及んでしまう。私自身が恐れるもの、見せたくないものをテーマとした映画を作るのは、そうすることで孤独感が薄れるように感じるからです。映画を観てくださった方にも同じように感じてもらえることを願っています。



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監督/脚本/プロデューサー:ハリナ・ライン

1975年、オランダ生まれ。ヴィジョナリーな監督、プロデューサー、俳優、脚本家であり、限界を押し広げる破壊的で挑発的な物語を創り出す才能で知られている。監督デビュー作『Instinct(原題)』(19)は、ロカルノ国際映画祭でプレミア上映され、ヨーロッパ映画賞最優秀新人賞にノミネートされ、アカデミー賞®最優秀国際長編映画賞へのオランダ代表作品となる。続くA24製作の『BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』(22)はSXSWでワールドプレミア上映され、フィルム・インディペンデント・スピリット賞最優秀監督賞にノミネートされる。俳優としては、ポール・ヴァーホーヴェン監督の『ブラックブック』(06)、トム・クルーズと共演した『ワルキューレ』(08)に出演している。



取材・文:稲垣貴俊

ライター/編集者。主に海外作品を中心に、映画評論・コラム・インタビューなどを幅広く執筆するほか、ウェブメディアの編集者としても活動。映画パンフレット・雑誌・書籍・ウェブ媒体などに寄稿多数。国内舞台作品のリサーチやコンサルティングも務める。




『ベイビーガール』

3月28日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

配給:ハピネットファントム・スタジオ

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