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『異端者の家』撮影監督:チョン・ジョンフン カメラマンも登場人物の一人なんです【Director’s Interview Vol.485】
『オールド・ボーイ』(03)、『親切なクムジャさん』(05)、『お嬢さん』(16)など、長きにわたりパク・チャヌク作品をカメラに収めてきた撮影監督、チョン・ジョンフン。彼が作り出す深みのある陰影と官能的なカメラワークはハリウッドでも歓迎され、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(17)、『アースクエイクバード』(19)、『ラストナイト・イン・ソーホー』(21)などの人気作でも、その実力を遺憾なく発揮している。
そんな彼の最新作が、異色のサイコ・スリラー『異端者の家』。主演のヒュー・グラントがこれまでのイメージを覆す悪役に挑戦、その演技が絶賛されている本作だが、チョン・ジョンフンはいかにしてそれらをカメラに収めたのか。オンラインで話を伺った。
『異端者の家』あらすじ
シスター・パクストン(クロエ・イースト)とシスター・バーンズ(ソフィー・サッチャー)は、布教のため森に囲まれた一軒家を訪れる。ドアベルを鳴らすと、出てきたのはリード(ヒュー・グラント)という気さくな男性。妻が在宅中と聞いて安心した2人は家の中で話をすることに。早速説明を始めたところ、天才的な頭脳を持つリードは「どの宗教も真実とは思えない」と持論を展開する。不穏な空気を感じた2人は密かに帰ろうとするが、玄関の鍵は閉ざされており、助けを呼ぼうにも携帯の電波は繋がらない。教会から呼び戻されたと嘘をつく2人に、帰るには家の奥にある2つの扉のどちらかから出るしかないとリードは言う。信仰心を試す扉の先で、彼女たちに待ち受ける悪夢のような「真相」とは——。
Index
リクエストは退屈させない画作り
Q:スコット・ベック&ブライアン・ウッズ監督とは初タッグですが、今回はどのような経緯で依頼が来たのでしょうか。
チョン:実は2人と仕事をするのは初めてではなく、彼らが監督した『65/シックスティ・ファイブ』(23)の追加撮影を担当していたんです。その撮影は2〜3日で終わりましたが、そこで知り合ったことが今回の仕事に繋がったと思います。
Q:撮影にあたり、監督からはどのような話がありましたか。
チョン:メインキャストの3人がずっと話している映画なので、とにかく退屈させない画作りをして欲しいと。3人が物語を引っ張っていくように撮ってほしいと言われました。
『異端者の家』© 2024 BLUEBERRY PIE LLC. All Rights Reserved.
Q:物語のほとんどが家の中という限定空間ですが、アングルやカメラワークはどのように決めていかれたのでしょうか。
チョン:ストーリーボードも用意されていましたが、現場でリハーサルをして決めることが多かったです。リハーサルでは俳優に動いてもらって動線を決めていくのですが、カットは割らずにその動きをずっと撮り続けるという方法を採用しました。映画をよく見てもらうとわかるのですが、実はあまり床が映っていません。というのも、床にアクリルシートを敷いて、その上で撮影をしていたんです。そのアクリルシートを“ダンスフロア”と呼んでいたのですが、そうすることにより俳優の動線が掴みやすくなる。まるでカメラも俳優と一緒に演技をしているようでした。
また、俳優たちはテイクごとに違った演技や動きを見せてくれたので、私達も都度アングルや動きを変えていきました。ワイドショットで撮ることもあれば、目のアップだけを撮ることもある。そうやっていろんなショットをたくさん撮っておいて、編集で自由に使ってもらいました。監督の演出や俳優の動きを踏まえつつ、カメラオペレーターに都度インカムで指示を出していたので、まるでライブショーを撮っているような感覚もありました。