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『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』エレン・クラス監督 ビジュアルを駆使して本能に訴えかける【Director’s Interview Vol. 488】

© BROUHAHA LEE LIMITED 2023

『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』エレン・クラス監督 ビジュアルを駆使して本能に訴えかける【Director’s Interview Vol. 488】

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『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』は、20世紀を代表する女性報道写真家であるリー・ミラーの、情熱的で数奇な運命を描く実話。1920年代、トップモデルとして活動していたミラーは、「写真を撮られる側ではなく、撮る側でありたい」とニューヨークからパリへ渡り、芸術家マン・レイに弟子入り。パブロ・ピカソ、ココ・シャネル、ジャン・コクトー、ダリ、コンデ・ナストら時の天才たちを魅了してきた輝きは報道写真家に転身してからも光りを放ち、第二次世界大戦が始まるとその情熱とエネルギーは戦場へと向けられていく──。


主演と製作総指揮を兼ねるのはケイト・ウィンスレット。リー・ミラーの人生に深く感銘を受け映画化を熱望したウィンスレットは、監督に本作が長編映画監督デビューとなる、エレン・クラスを抜擢。ウィンスレットが出演、クラスが撮影監督を担当した『エターナル・サンシャイン』(04)以降、二人は親交を続けてきた仲だという。そんなエレン・クラス監督は、いかにして本作を作り上げたのか。話を伺った。



『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』あらすじ

1938年フランス、リー・ミラー(ケイト・ウィンスレット)は、芸術家や詩人の親友たち──ソランジュ・ダヤン(マリオン・コティヤール)やヌーシュ・エリュアール(ノエミ・メルラン)らと休暇を過ごしている時に芸術家でアートディーラーのローランド・ペンローズ(アレクサンダー・スカルスガルド)と出会い、瞬く間に恋に落ちる。だが、ほどなく第二次世界大戦の脅威が迫り、一夜にして日常生活のすべてが一変する。写真家としての仕事を得たリーは、アメリカ「LIFE」誌のフォトジャーナリスト兼編集者のデイヴィッド・E・シャーマン(アンディ・サムバーグ)と出会い、チームを組む。1945年従軍記者兼写真家としてブーヘンヴァルト強制収容所やダッハウ強制収容所など次々とスクープを掴み、ヒトラーが自死した日、ミュンヘンにあるヒトラーのアパートの浴室で戦争の終わりを伝える。だが、それらの光景は、リー自身の心にも深く焼きつき、戦後も長きに渡り彼女を苦しめることとなる。


Index


リー・ミラーとの共通性



Q:これまで撮影監督としてのキャリアを築いてきましたが、監督になることは以前から希望されていたのでしょうか。


クラス:私のキャリアは実は監督から始まりました。大学の卒業制作で映画を監督するために撮影監督を雇い、長編ドキュメンタリーを作ろうと4日間に渡り撮影しましたが、撮影した素材は“ただ写している”ものばかりで全くストーリーを語っていなかった。私はカメラを使ってストーリーを語りたかった。それで次からは自分でカメラも回そうと決意しました。次の作品はアメリカ在住のラオス人についてのドキュメンタリーで、それは自分で撮影しました。ラオス人のおばあさんがドアのところに立っていて、そこからズームアウトするとアメリカの公営住宅が広がっていく。またその隣にはパンクロッカーみたいな格好をしたラオスの子供が写っている。そういった、何か意味を感じさせるような画を撮り、自分のカメラでストーリーを伝える、意味を作っていくことを始めました。するとその後、私の作品を観た人たちから撮影を頼まれるようになり、撮影監督としてのキャリアが始まったのです。


そして今回、再び監督をやることになったわけですが、自分で監督をするのであれば政治的な意義のある映画を作りたい。その意味では、戦争という政治的状況を描いた本作は完璧な題材でした。



『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』© BROUHAHA LEE LIMITED 2023


Q:リー・ミラーは写真家であり、あなたと同じく“撮影すること”を生業としています。何か感じるものはありましたか。


クラス:私も元々写真の世界にいたので、リー・ミラーと似ているところがあると思います。彼女は戦地に行っても、戦争そのものよりもそれに影響されている人々を撮ることが多かった。例えば、ナチス崩壊後のサン・マロ(戦時中ドイツに占領されたフランスの都市)では、ドイツ人の若い女性が自殺しているところを撮影しています。そういったものをあえて撮っているところに、彼女の人間性あふれるアプローチを感じますし、彼女は哲学的な意味での生と死に対する感覚を持っていた。彼女が何を選んで写しているのか、そこに興味がありますね。





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