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『エターナル・サンシャイン』愛の記憶を呼び覚ます「忘れられない恋人」

(c)Photofest / Getty Images

『エターナル・サンシャイン』愛の記憶を呼び覚ます「忘れられない恋人」

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『エターナル・サンシャイン』あらすじ

恋人同士だったジョエルとクレメンタインは、バレンタイン直前に別れてしまう。ジョエルは仲直りしようとプレゼントを持って彼女に会いに行くが、彼女は、ジョエルのことを知らないかのように扱い、目の前で他の男といちゃつく。やがてジョエルは、彼女が自分との思い出を消すために記憶除去手術を受けたことを知り、自分もその手術を受ける決心をする・・・。


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公開から時を経ても愛され続ける傑作



 観たことのない映像、懐かしい胸の痛み。こんな恋愛映画には、生涯出会えない。


 何年経っても僕の中に在り続ける、忘れられない恋人のような作品だ。


 ケンカした恋人クレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)が、「記憶除去手術」を行ったと知ったジョエル(ジム・キャリー)。なぜ彼女は、自分との記憶を消してしまったのか? 苦悩と逡巡の末、ジョエルは自らも手術を受けるが、恋の痛みも甘さも到底消したくない大切な記憶だと気づき……。


 2005年に日本公開された本作は、ゼロ年代の映画を語る際に確実に名前が挙がる傑作。叶わぬ恋を経験した全ての人が思う「記憶を消したい」を映像化するというアイデア、記憶の中を描いたユニークな映像表現、のちの超A級キャストが織りなす演技のハーモニー、ポスタービジュアルやカラーリングも斬新で、まさに「創造性しかない」映画だ。


『エターナル・サンシャイン』予告


 2005年に開催された第77回アカデミー賞授賞式では、『アビエイター』『ホテル・ルワンダ』『Mr.インクレディブル』『ヴェラ・ドレイク』という社会派作品を抑え、脚本賞を受賞。


 完全に創作で、しかも賞を取りにくいラブストーリーである本作が受賞したのは、圧倒的な独創性に因るものだろう。


 その物語を構築したのは、名脚本家チャーリー・カウフマンだ。『マルコヴィッチの穴』(99)でオスカーノミネートを果たし、『ヒューマン・ネイチュア』(01)、『アダプテーション』(02)、『コンフェッション』(02)と奇抜な作品を次々と創生。スパイク・ジョーンズ、ミシェル・ゴンドリー、ジョージ・クルーニーといった新たな映像界の旗手たちと組み、ゼロ年代以降のカルチャー映画の基盤を作っていった。


『マルコヴィッチの穴』予告


 それらの経験を経た上で製作された本作は、従来の「遊び」は保ちつつ、初めてちゃんと「普通の人々」を描いた勝負作。これまではクセが強すぎたため敬遠していた大衆の心理も、がっちりと掴んだ。


 監督は、映像派として知られるミシェル・ゴンドリー。デヴィッド・フィンチャーやスパイク・ジョーンズと同じく、ミュージック・ビデオやCMのディレクター出身だ。『人生はビギナーズ』(10)のマイク・ミルズ、『(500)日のサマー』(09)のマーク・ウェブ等、MV系監督は映画ファンからの支持が厚いが、その法則を作った一人でもある。


 物語的な面白さと、映像的な新鮮さの融合。さらに、大衆に届く共感性と普遍性。すべてを備えた本作は、目新しさを求める若者から玄人ぞろいのオスカーまで幅広く魅了し、公開から15年以上を経ても愛され続けるマスターピースとなった。



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