2018.11.26
※本記事は『A GOHST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』の物語の核心に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。
Index
- ミニマルなのに壮大。時空を超え漂う可愛らしいオバケ
- 世間の注目や期待から逃れ、失敗も辞さぬ覚悟で臨んだプロジェクト
- 試行錯誤によって生まれた、絶妙なオバケの質感
- きっかけは夫婦の喧嘩から?フィクションに刻まれた日常の記憶
- 住処をめぐって考察を重ねるロウリー監督のこだわり
ミニマルなのに壮大。時空を超え漂う可愛らしいオバケ
とても奇妙な映画を観た。奇妙といっても、怖いとかおどろおどろしいとか、そういった要素はいっさいなし。主人公はオバケなのに、その外見はキャスパーやオバQのように可愛らしい。一方、作風はとてもミニマルでありながら、その小さな間口から壮大な宇宙を覗かせるほどの”深遠さ”を併せ持っている。
今ふと浮かんだ”例え”を臆面もなく口にするなら、それは「オバケ版『ツリー・オブ・ライフ』」。この言葉にどれほどの人が頷いてくれるかわからないが、しかしこの映画には、オバケの視点で悠久の時を紡ぐ、いわゆるテレンス・マリックを思わせる映像叙事詩的な側面が確実に存在する。
そういえば、本作の監督であるデヴィッド・ロウリーの出世作『セインツ-約束の果て-』(13)もまた、どこかマリックの『地獄の逃避行』(73)に通じる、激しくも美しい作品だったのを思い出す。両者はどこか根底の部分で繋がっているのだろうか。