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『ア・ゴースト・ストーリー』可愛らしく深遠な幻想譚が、極秘裏に制作された理由とは?  ※注!ネタバレ含みます。

『ア・ゴースト・ストーリー』可愛らしく深遠な幻想譚が、極秘裏に制作された理由とは? ※注!ネタバレ含みます。


試行錯誤によって生まれた、絶妙なオバケの質感



 それにしても本作がもたらす最大の驚きは、主演ケイシー・アフレックの起用法である。なにせ、彼ほどの有名俳優が、本編の3分の2を超える間中ずっと、白いシーツにすっぽりと覆われただけの状態でカメラの前に立ち続けるのだ。オバケと化した彼は一言もしゃべらないし、傍目にはそれがケイシーなのかどうかさえわからない。だがあのシーツの中には間違いなく彼がいる。我々はただそのことを信じるほかない。作り手と私たちは、主人公の死と同時に、こういった不可思議な信頼関係によって強く結ばれるのである。


 この信頼に足るオバケの形状を作り出す上でも、作り手たちは様々な試行錯誤を強いられた。いざケイシーにあの白いスーツをかぶらせただけでは、身体のラインが露わになりすぎ、あの絵に描いたような“可愛らしさ”は表現できない。それに、あそこに誰かが隠れているような想像の余地が少しでも生じてしまうと、この映画を支える“奇妙さ”のバランスは崩れてしまう。作り手たちは、ああでもない、こうでもないと言いながら、独特のシンメトリーと丸みを求めて奮闘を続け、最終的にケイシーにフェルト製の帽子をかぶらせ、さらにペチコートを着用させることであの計算された状態へとたどり着いたのだという。




 さらに、撮影の序盤ではもっとオバケを精力的に動かしながら、その一連の動作によって個性(もっと言うと、ケイシーらしさ)を導き出そうとしていたらしいが、ロウリー監督は「これではダメだ!」と判断。それまでに撮った大部分の映像をボツにした上で、オバケがただ立ち尽くし、物事のなりゆきをじっと見つめ、動くときにはとにかくゆーーーっくりと動くというあの独特の“間合い”を追求していったのだ。 


 自ら好んで飛び込んだ実験的なプロジェクトとはいえ、この選択によってロウリー監督は日々、とことん産みの苦しみを味わうことに。かくも明確な答えのないものを手に入れようと必死にもがく様は、ヒロインのルーニー・マーラがしたためた紙片を手にしようと、柱にすがり続けるあのオバケの姿とも似ている気がする。



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