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『ムーンライト』「A24」に「プランB」インディペンデント系製作会社が守り抜く、挑戦的なオリジナル企画と作家性

『ムーンライト』「A24」に「プランB」インディペンデント系製作会社が守り抜く、挑戦的なオリジナル企画と作家性


 第89回アカデミー賞。大作『ラ・ラ・ランド』(16)を抑え、栄誉ある作品賞を獲得したのは、無名の黒人監督による低予算映画『ムーンライト』(16)であった。長編二作目にして脚色賞・助演男優賞を含む三冠達成を成し遂げたこの映画は、いったいどのようにして生まれたのか。


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黒人映画をアップデートする



 本作の監督であるバリー・ジェンキンスは、マイアミで生まれ育ち、地元フロリダのフィルムスクールを卒業後、学友であった撮影監督のジェイムズ・ラクストン、編集のナット・サンダースら数人で、予算150万円の自主映画『Medicine for Melancholy』(08)を撮った。モノクロに近い色調で、若い黒人男女の刹那的な恋愛を繊細に描いたこの映画は、映画祭や批評家に受け入れられたが、興行的な成功は見込めず、ジェンキンスは映画からしばらく遠ざかってしまう。


 その後、CMディレクターなどで生計を立てつつ、学生時代からの友人でありプロデューサーのアデル・ロマンスキーと次作の構想を練る中で、劇作家タレル・アルヴィン・マクレイニーが書いた戯曲『In Moonlight Black Boys Look Blue』を人づてで勧められる。この作品は、マクレイニー自身の半自伝的な物語であったが、驚くべきはその内容だった。主人公の黒人とジェンキンスの生い立ちがほとんど同じだったからだ。




 事実、二人が生まれ育ったマイアミの地区も学校も偶然一緒で、母親が麻薬常習者という境遇も同じであった。また、黒人映画には珍しく、LGBTQアイデンティティがメインテーマであり、セクシュアルでロマンティックな作風に憧れていたジェンキンス監督は、この作品を自ら脚色することを決意する。


 今までにない先鋭的な黒人映画を作るために、映画話法もアップデートし、実験的演出をする方向性を固めていく。完成後のインタビューで明らかにしているが、今作を制作するにあたってもっとも影響を受けた作品は、ウォン・カーウァイの『ブエノスアイレス』(97)だと言う。黒人のステレオタイプなイメージを嫌い、表現を進化させようとしている現代の若き作家が、香港の特殊性をベースにしたウォン・カーウァイの作家性に共鳴するとは、20年前に誰が想像できただろうか。




 性を超えた愛の物語として、カメラの構図も音楽もオマージュが捧げられ、中でもカエターノ・ヴェローゾの音楽は同じ楽曲まで使用している。(その曲「ククルクク・パロマ」は、ペドロ・アルモドバル監督『トーク・トゥ・ハー』(02)でも、ミュージシャン本人が登場して使用されている)他にも参考にしたのは侯孝賢、大島渚、ゴダール、クレール・ドゥニなど、アートフィルム畑のレジェンドたちである。一本目から引き続き、撮影監督のジェイムズ・ラクストンと編集のナット・サンダースと一緒に、撮影日数25日というアメリカ映画としては破格に少ない日数で撮りあげた。



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