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『ビール・ストリートの恋人たち』70年代が描く「いま」を丁寧に撮り上げた、バリー・ジェンキンス監督

『ビール・ストリートの恋人たち』70年代が描く「いま」を丁寧に撮り上げた、バリー・ジェンキンス監督

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活かされたバリー・ジェンキンス監督の作風



 『ラ・ラ・ランド』(16)と競り合い、第89回アカデミー賞作品賞に選ばれた『ムーンライト』(16)は、特徴的な撮影と編集によって、孤独な日々を送る一人の人間の心情を、美しく幻想的にとらえた傑作だった。まだ30代にして、この純粋な魂を映し出す映画を完成させた、早熟のバリー・ジェンキンス監督の注目すべき次の作品が、20世紀アメリカを代表し、アフリカ系の作家としても著名な、ジェイムズ・ボールドウィンの小説を原作とした『ビール・ストリートの恋人たち』である。


 ジェンキンス監督は、この小説の映画化を長い間計画していて、時間をかけ自ら脚本を書き上げている。結末部分に監督の大きな“付け加え”があるものの、おおむね原作に忠実である。そして、『ムーンライト』と同じく、編集によって美しく整えられた色調によって、ひとつひとつのシーンが、慈しむように丁寧に撮られていることから、この物語への監督の強い愛情がひしひしと伝わってくる。



 というのも、この原作は人種差別問題が背景となる冤罪事件を描いているように、差別という重苦しい要素を扱いながらも、全体的な印象はむしろロマンティックで繊細な雰囲気なのだ。キキ・レインが演じる“ティッシュ”、ステファン・ジェームズ演じる“ファニー”の、運命的な恋人同士が、その意に反して刑務所の塀を隔てて別れ別れになるという悲劇的な構図は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を想起させるところがある。


 この社会問題への意識と、繊細な美しさが同居する世界観というのは、『ムーンライト』にも共通する。というより、かねてからのボールドウィン文学からの強い影響が、ジェンキンス監督の作風を生み出したといえるのかもしれない。しかし、描かれる問題自体はあまりにも深刻だ。



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