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70年代が描く「いま」を丁寧に撮り上げた、バリー・ジェンキンス監督『ビール・ストリートの恋人たち』

70年代が描く「いま」を丁寧に撮り上げた、バリー・ジェンキンス監督『ビール・ストリートの恋人たち』


ジェイムズ・ボールドウィンのハーレム



 舞台となるニューヨークのハーレムは、ボールドウィンの生まれた場所でもある。そこで彼は10歳の頃、不審者として白人警官に身体検査を受けるという、理不尽としか思えない人種差別による仕打ちを経験している。といっても彼は、黒人社会の仲間内のなかで居心地の良さを感じていたわけでもない。性的な趣向におけるマイノリティであったということをはじめ、ずば抜けた聡明さで読書を好む性格から、学校の同級生には馴染めず、学生時代に教会で説教士の仕事に従事するものの、文学への傾倒によって信仰に疑問を持ち聖職からも離れたりしている。


 その孤独感は、本作の青年ファニーに受け継がれている。オブジェを製作し芸術家として成功を目指す彼は、ハーレムのなかでは理解されづらい存在だ。くわえて彼の母親はいささか熱心過ぎる神の信奉者であり、父親は家庭内で暴力を振るうような人物。このような家庭環境が、継父から暴言を受けながら育ったというボールドウィンの、“家族”というものに対する幾分冷静な描き方に反映されているように感じられる。




 ボールドウィンは被差別者としての視点を持ち、公民権運動にも参加しながら、その類い希な知性をもって差別問題を客観的な視点で分析する部分もある。それは、アフリカ系のなかでも孤独な面を持つボールドウィンだからこその複雑さであり、社会問題についての洞察の深さにもつながっている。



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