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  4. 『ア・ゴースト・ストーリー』可愛らしく深遠な幻想譚が、極秘裏に制作された理由とは? ※注!ネタバレ含みます。
『ア・ゴースト・ストーリー』可愛らしく深遠な幻想譚が、極秘裏に制作された理由とは?  ※注!ネタバレ含みます。

『ア・ゴースト・ストーリー』可愛らしく深遠な幻想譚が、極秘裏に制作された理由とは? ※注!ネタバレ含みます。


住処をめぐって考察を重ねるロウリー監督のこだわり



 案の定、『ア・ゴースト・ストーリー』にはその”住処”という主題が濃厚なまでに浮かび上がる。一つは夫婦の何気ない会話の中で。そしてもう一つは、ゴーストとなった夫が時空を超えてもなおその土地に縛られ続けるというという意味において。


 そして、ロウリー作品を見続けてきた人ならば、この主題が過去作でも幾度となく繰り返されてきたものであることに気づくはずだ。出世作『セインツ』でも二人の主演俳優(今作と同じケイシー&マーラ)のセリフの中で「この場所にとどまるか、それとも他の場所へ移るのか」について語られる。さらにディズニー作品『ピートと秘密の友達』もまた、森の中と人間社会という二つの場所を巡って、主人公の少年が思い悩む映画だった。




 言い方を変えるなら、彼の作品ではいつも、何らかの不可抗力によって大切な存在と引き離された主人公が、どうにかして元の場所へと戻ろうと懸命にもがき続ける。筆者にはこれらの一貫する主人公たちの姿もまた、あの「答えを求めて壁にすがるオバケ」に集約されているように思えてならないのだ。


 ちなみに、ルーニー・マーラ演じる妻が書き残すメモの内容は、最後まで観客に提示されることはない。撮影にあたり、監督はマーラに「何かこのシーンに適していると思うことを書いて」と促したのだとか。彼女はふと思いついた一言を書いて、壁の隙間に投じた。それから住居の崩壊とともにあの紙片も失われた。後からロウリーが「なんて書いたの?」と尋ねたが、マーラは「忘れてしまった」と答えたそうだ。


 本当に忘れたのか、それとも言いたくなかったのかは分からない。しかしこの一連のエピソードは『ア・ゴースト・ストーリー』の世界観、ひいてはロウリー作品の本質を捉える手がかりとも言えるのかも。




 重要なのは“答え”の中身でも、それを手にできるかどうかでもない。なぜ彼が住処といったものに心奪われ続けるのかも分からない。むしろ、すでに意味や目的を失っているかもしれない“おぼろげなるもの”を掴もうと、必死に手を伸ばし続ける姿そのものに、光は注がれているのではないか。


 常々「僕は無神論者だし、死後の世界も信じない。けれどゴーストは信じる」と語るロウリー監督。その言葉通り、実態を失っても強い念だけが時空を超え残り続ける様が、本作には映し出されていた。これは世にも奇妙な幻想譚でありながら、しかし彼にとっては極めてリアルな物語。おそらくこの80年生まれの俊英は、同じユニバースを浮遊するかのごとく、これからも“住処”をめぐる思いを、様々な主人公の姿を借りながら紡ぎ続けるのだろう。


 ロウリー監督の次回作は、『ピートと秘密の友達』でも組んだ名優ロバート・レッドフォードが主演する”The Old Man & the Gun”。映画界のレジェンドの俳優引退作にも位置付けられる本作が、果たしてどのような仕上がりを見せているのか。我々も日本到着を楽しみに待ちたいものだ。


参考:

https://www.indiewire.com/2017/01/a-ghost-story-david-lowery-interview-making-of-rooney-mara-casey-affleck-sundance-2017-1201774735/

https://www.interviewmagazine.com/film/david-lowery-a-ghost-story

https://theplaylist.net/david-lowery-ghost-story-interview-20170707/

https://www.theguardian.com/film/2017/aug/09/a-ghost-story-interview-david-lowery-casey-affleck-rooney-mara-pie

http://collider.com/david-lowery-a-ghost-story-interview/#bedsheet

https://www.vanityfair.com/hollywood/2017/07/a-ghost-story-casey-affleck-rooney-mara-david-lowrey-interview



文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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作品情報を見る



『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』

11月17日(土)全国ロードショー

配給:パルコ (c)2017 Scared Sheetless, LLC. All Rights Reserved.


※2018年11月記事掲載時の情報です。

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