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20世紀屈指の感動作『タイタニック』のスペクタクルを生んだ前例なき挑戦

20世紀屈指の感動作『タイタニック』のスペクタクルを生んだ前例なき挑戦


 20世紀初頭に起きた豪華客船沈没事故の悲劇を、船上で出会い恋に落ちる架空の若い男女の目を通して描く『タイタニック』(97)は、ジェームズ・キャメロンの狙い通り世界中を感動の渦に巻き込んだ。 前回の記事では、魅力的な主役2人のキャスティング、名場面の撮影時に恵まれた幸運、主題歌の誕生秘話などエモーショナルな要素を主に紹介したが、今回はタイタニック号のリアルな描写や、沈みゆく巨船のスペクタクルシーンを可能にした、前例のない挑戦の数々を取り上げたい。


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深海底の沈没船タイタニック号を撮影



 キャメロンを『タイタニック』の企画に突き動かしたのは当初、「深海底に眠るタイタニック号を自らの手で撮影し、それを劇映画に収めたい」というシンプルな、しかし実現にはとてつもない困難を伴う願望だった。水深4,000メートルもの深海で望むような映像を得るためには、新たに撮影システムを開発し、何度も潜水しなければならず、当然費用も莫大になる。沈没事故を再現し、そこに大衆向きのラブロマンスをからめるというのは、ある意味、配給会社に巨額の製作費を承認してもらうための方便だった。


 1995年5月、20世紀フォックスの幹部に「船上の『ロミオとジュリエット』」というコンセプトを伝え、キャメロンは当面の潜水撮影費用200万ドルを認めてもらう。だが、のちに2億ドルにまで膨らむ総製作費に照らすなら、これはほんの手付金程度の額でしかなかった。



(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. 


 ともあれ、キャメロンは深海撮影の準備を本格化させる。潜水艇の中から窓越しにカメラを向けるのでは、劇映画に使える映像など望むべくもないので、潜水艇の外部にカメラを据え付け、内部からリモコンでパンやチルトを操作できるようにする必要がある。ここで問題になるのが、1平方cmあたり436kgという水圧だ。システムを収納する容器や潜水艇との連結部に漏れが生じるなら、単にカメラやフィルムが駄目になるだけではない。圧壊によって生じるエネルギーにより潜水艇そのものが損傷し、キャメロンと乗組員の命を一瞬で奪う危険があるのだ。


 このシステムの開発は、キャメロンのカメラ装置開発会社ライトストーム・テクノロジーズで働く弟のマイク・キャメロンに託される。マイクは、カメラ本体、レンズ、パン&チルト機構、容器、ガラス窓など各分野で最新の技術を持つ計23社と協力し、1回の潜水でフィルム1巻分、約12分の撮影ができるシステムを完成させた。


 キャメロンはまた、沈没船調査のシーンにリアリティーを持たせる小道具として、遠隔操作探査機(ROV)を自ら設計し、『アビス』(89)の潜水ヘルメットを製作したウエスタン・スペース&マリーンに発注。このROVは、潜水艇からケーブルを引いて推進する姿から、「スヌープ・ドッグ」(散歩のときリードを引っ張りながらクンクンかぎまわる犬の意味)と呼ばれることになる。


 95年9月、ロシアの調査船ケルディッシュ号と2隻の深海探査艇ミールを使った潜水撮影が始まる。1度の撮影のために往復15~16時間も潜水と浮上が必要なため、事前に沈没船の模型と小型カメラを使ったリハーサルが入念に行われた。ミールの定員は3名で、キャメロンや水中撮影監督のアル・ギディングスら撮影スタッフと、操縦手などロシア人の技師たちが2隻に分乗する。2隻で連携することで、タイタニック号を撮影するだけでなく、「タイタニック号を調査している探査艇」の絵が得られるからだ。


 潜水は当初8回の予定だった。キャメロンは第1回の潜水で、初めてタイタニック号を自分の目で見た感慨に浸る余裕などなく、予定のショットを撮ることで必死だったという。しかし、2回目の潜水が終わったあと、船室に一人でいると急に涙があふれてきた。大勢の命が失われた悲劇の重大さ、彼らが感じた恐怖が、遅れてキャメロンの心を震わせたのだ。この体験から、タイタニック号とその乗客たちに起きたことをできるだけ忠実に再現しようという思いは一層強まった。



(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. 


 スヌープ・ドッグは小道具として開発されたが、カメラを搭載しており操作性も優れていたので、結局タイタニック号船内の探査に使われることになった。キャメロンはDVDのコメンタリーで「人類初の試みだ」と自負している。


 ときには、ボトム・ストームと呼ばれる海底の激流に巻き込まれ、危うく浮上不可能になりかけることもあった。それでもキャメロンは臆することなく、撮影が不首尾に終わった回のやり直しも含め、計12回の潜水を敢行した。



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