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『アビス』の映画史的意義。それは“ジェームズ・キャメロンとCGの邂逅”

『アビス』の映画史的意義。それは“ジェームズ・キャメロンとCGの邂逅”


 ジェームズ・キャメロンが監督・脚本を務めた劇映画の第3作にあたる『アビス』(89)で、海洋アクション映画初の本格的な水中撮影を実現すべく、原子炉格納容器を転用した巨大水槽タンクの建設にはじまり、撮影向きの潜水ヘルメットや水中撮影機材などを数多く新開発したことは 前回の記事で紹介した。


 本作でのチャレンジはいくつもあるが、今回取り上げたいのは、キャメロンが自身のフィルモグラフィーにおいて初めてコンピュータ・グラフィックスを導入したこと。80年代後半、映像の視覚効果としてのCG活用は始まってまだ日が浅く、その表現力や価値は決して確立されたものではなかった。『アビス』の重要なシーンでCGを使うということは、当時のキャメロンにとって大きな賭けだったのだ。 


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脚本執筆前に構想された「偽足」



 キャメロンは脚本の前段階としてアウトラインを書き上げ、しばらく間を開けてから脚本を仕上げるというステップを踏む。実はこのアウトラインを書くのが自身で最もクリエイティブな部分であり、登場人物から、基本的な物語展開、人間関係、さらに特殊効果までも構想するという。『アビス』のアウトラインには、登場人物全員、ハリケーン、油田採掘の海上拠点となるエクスプローラー号、そして非地上知的生命体(NTI)の「偽足」も含まれていた。


 キャメロンはNTIを、水を分子レベルで自在に操る能力を備えた存在として構想した。物語の中盤、NTIは海底油田掘削基地「ディープコア」の内部を観察するため、海水を触手状に伸ばして偽足を作り、扉を開けたり、遭遇した人間の顔を模倣したりする。ちなみに「偽足」(pseudopod、スードポッド)は生物用語で、アメーバなどの原生動物が運動や栄養吸収に使う“仮の足”を指す(「仮足」とも呼ばれる)。


 海水でできている偽足は、透き通っていて、ゆらめき、きらめき、周囲を反射させ、さらに先端を人間の顔の形に変化させる――。早い段階からイメージは固まっていたものの、キャメロンはこれをどんな方法で表現すべきか決めかねていた。すでに『トロン』(82)など数本の映画で採用された新興技術のCGも候補に挙がったが、制作に長時間を要することや品質の問題が懸念されたのだ。そこでキャメロンは、求める映像の詳細を多数の視覚効果会社に手紙で伝え、試作映像(デモ)を見てから託す相手を決めることにした。





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