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『ターミネーター』はなぜ古びない?時代を超越する「恐怖」と「構成力」
『ターミネーター』あらすじ
未来の革命リーダーを抹殺せんがため、近未来の地球から送り込まれた殺人サイボーグ、ターミネーター! 彼は革命リーダー、ジョン・コナーの未来の母となる人物サラを探し出し、殺害するために追跡を始める。だが、そのターミネーターからサラを守るため、一人の革命戦士・リースが未来からやってきた。ガンを片手に次々と殺害を繰り返し、不死身の体で追ってくるターミネーターを相手に、サラとリースは死闘を展開するが──!
Index
映画ファンの「義務教育」的なポジションを確立
映画には基本的に、その作品を知るきっかけがあるものだ。予告編を観る、ポスターやチラシを見かける、レンタル店や配信サービスで知る……その作品との「ファーストコンタクト」は近年、これまで以上に多岐にわたるようになった。
しかしその中で、人類全体の義務教育である、と言わんばかりに、作品の中身より先にその「名」が語り継がれてきた映画がある。『スター・ウォーズ』(77)や『ジョーズ』(75)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)……そしてそう、『ターミネーター』(84)も当然ながらその筆頭だ。本作が世に放たれた1984年以降に生まれた者は皆、本編を観るより先に、この映画に薫陶を受けたファンたちから熱い吐息を浴びせられて育ってきただろう。
「伝説」「金字塔」「元祖」「時代を変えた」……『ターミネーター』は、王者にふさわしく大仰な冠と共に紹介されてきた。そしてそれらを全て受け止め、35年経った今もなお頂点に君臨し続けている。「最高傑作」とうたわれる『ターミネーター2』(91)も、本作のヒットがなければ生まれることはなかった。
『ターミネーター』予告
そんな『ターミネーター』について、今さら何を語ればいいのか? 革新的な映像技術、アーノルド・シュワルツェネッガーのハマりぶり、舞台裏のエピソードの数々……それらはもう、多くの映画ファンが知る「常識」となってしまっている。ジェームズ・キャメロン監督やシュワルツェネッガーのプロフィールにおいては、もはや説明不要だ。
ただ、『ターミネーター2』の“正統な”続編『ターミネーター:ニュー・フェイト』(19)の公開が控える今、改めて考えてみたいポイントが1つある。それは、「なぜ『ターミネーター』は古びないのか?」ということだ。
『アベンジャーズ』(12)や『ジョーカー』(19)以降に生まれてきた世代にもきっと、『ターミネーター』は当然のように突き刺さり、「観て当然」の映画として血肉に刻まれていくだろう。それこそ、義務教育のように。その要因は何なのか? 映像面だろうか?
確かに、本作の映像が当時の観客に与えた衝撃は大きかったのだろう。ただそれだけでは、ここまで語り継がれることはない。
『ターミネーター:ニュー・フェイト』予告
『ジェミニマン』(19)がウィル・スミスの青年期と現在を戦わせる、という奇想天外なプランを成功させ、『アイリッシュマン』(19)がロバート・デ・ニーロやアル・パチーノを若返らせたように、映像技術の進化はとどまるところを知らない。そんな中にあって、35年前の技術は、今の若者たちにとって新鮮なものとはいえない。それなのに、『ターミネーター』は年月を経ても、新規のファンを増やし続けている。ここから察するに、人々を魅了しているのはもっと本質的な部分だ。
この映画はなぜ、長きにわたり「娯楽作のお手本」であり続けられたのか? 本稿では、『ターミネーター』が時代を超越する傑作である理由を、拙考ながら分析していきたい。