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『ターミネーター』はなぜ古びない?時代を超越する「恐怖」と「構成力」

(C)2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

『ターミネーター』はなぜ古びない?時代を超越する「恐怖」と「構成力」

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最大の特徴は、T-800が与える「恐怖」



 『ターミネーター』の中身の話に入る前に、まずはSF映画の歴史を簡単に振り返ってみよう。


 1977年に『スター・ウォーズ』が生まれ、同77年に『未知との遭遇』、79年に『エイリアン』、82年に『E.T.』『ブレードランナー』ときて84年に『ターミネーター』、85年に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と続く。


 ちなみに、1984年の全米映画興行収入ランキングは、1位が『ビバリーヒルズ・コップ』、2位が『ゴーストバスターズ』、3位が『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』、4位が『グレムリン』、5位が『ベスト・キッド』だ。ちなみに、『ターミネーター』は21位である。日本では翌85年に公開され、配給収入約5億3000万円のヒットを記録した。


 『スター・ウォーズ』の誕生から約10年間は、SF映画の黄金期といえよう。『ターミネーター』もしっかりこの中に食い込んでおり、一時代を築いた。



『ターミネーター』(C)2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. 


 では、『ターミネーター』の1番の売りはSF感なのか? そう問われると、頭に疑問符が浮かぶ。実は『ターミネーター』の中に、いかにもSF的な近未来の描写というのは意外に多くない。冒頭、空飛ぶ戦闘機とレーザー飛び交う戦場の描写で盛大にカマすのだが、それ以降はターミネーターの皮膚がはがれる中盤まで、現実的な描写が続く。もちろん設定的にはタイムトラベルものというゴリッゴリのSFではあるが、視覚的には非常に「生身」の感覚が強い。


 むしろ本作は「巻き込まれ型サスペンス」であり、「不死身の殺人鬼が追いかけてくるスリラー」であり、「狂った機械が登場する新機軸ホラー」でもあった。強烈に印象に残るのは、何をしても絶対に止まらないターミネーター、T-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)の恐ろしさだろう。


 『スター・ウォーズ』のワクワク感や『ブレードランナー』の悲壮感とはひと味違う、恐怖感。感覚的には『激突!』(71)、『ジョーズ』(75)、『』(63)そして『ミザリー』(90)といったような「全然死なない」「ひたすら追いかけてくる」映画の方が近いかもしれない。火だるまになっても、車にはねられても、皮膚がただれてどろりと溶けても停止せず迫ってくるT-800の姿に、震え上がった方は多いはずだ。



『ターミネーター』(C)2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. 


 つまり、『ターミネーター』の最大の特徴は恐怖やスリルにあるといえよう。ドキドキハラハラさせてくれる映画というのは、やはりいつの時代も人々の心をつかむものだ。


 ここで重要なのは、本作が極めてシンプルな構造ということ。メインの物語は「怖いヤツが地の果てまで追跡してくる」、ただそれだけ。老若男女関係なく、誰でも理解できる。置いてけぼりを食らうことがない。


 『ターミネーター』はその「導入」「あおり方」「見せ方」が抜群に巧みで、難解なイメージのあるSFやタイムトラベルといったジャンルを、観る者を選ばない超一級のエンターテインメントへと昇華している。



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