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『フロントライン』関根光才監督 エンターテインメントと社会的コンテクスト【Director’s Interview Vol.493】

『フロントライン』関根光才監督 エンターテインメントと社会的コンテクスト【Director’s Interview Vol.493】

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事実を見つめ、意見を押し付けない



Q:当時騒ぎ立てていたマスメディアやSNSの描き方に関して、決して煽ることなく抑制されているように感じました。


関根:実際に起きた事件だからこそ、エンターテインメント性を持ち込むことについては慎重でした。どんどん大袈裟にしてパニック映画的にすることは簡単ですが、そうすべき作品ではない。僕らが事実として知っていることを並べていくときに、そこに対して煽るのではなく、それをみんなで見つめていきたかった。観てくれる人はきっと、そういう視点があるのではないか。それを意識しながら作っていました。


Q:この映画を観ているときは“事実を見つめる”という感覚がすごくありました。だからこそ、当時の自分を省みてしまいました。


関根:新型コロナウイルスに関しては皆それぞれの思いや経験がある。それに対してこの映画が、「あなたはこう感じてください」と押し付けるわけにはいかない。僕らも同じように見た方が、次に役立つのではないかと。



『フロントライン』© 2025「フロントライン」製作委員会


Q:煽らず挑発せず、カメラをしっかりと構えてじっくり丁寧に撮っている印象がありました。撮影において意識したことはありましたか。


関根:ドキュメンタリーをやるときは、その人に寄り添い、その人の尊厳みたいなものを大事にしています。撮影自体が攻撃的なことなので、事実を基にしたフィクションのキャラクターであっても精神的な向き合い方は同じ。この映画では「実際にこういうことがありましたが、あなたはどう思いますか?」ということをやりたかったので、そこからブレずに逃げないことは、かなり意識していたかもしれません。


Q:小栗旬さん演じる結城英晴や窪塚洋介さん演じる仙道行義は指揮官ということもあり、基本的には電話やオンラインで会話しているシーンが多く、人物の動きはそう多くありません。演じること、演出することはかなり難しかったのでしょうか。


関根:船に乗り込んで行けない立場の人もいますし、そういう人が全体の指揮を執っていると面と向かって対応ができない。実際、電話やテレビ電話ばかりしていたそうです。そういった制約の中でシーンを積み重ねなければならないので、小栗さんたちはすごくやりづらかっただろうなと。そんな中でも丹念に想像力を膨らまして、ひとつひとつの会話を繋げてくれました。おかげで何とか完成できたかなという感じです。





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