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『フロントライン』関根光才監督 エンターテインメントと社会的コンテクスト【Director’s Interview Vol.493】

『フロントライン』関根光才監督 エンターテインメントと社会的コンテクスト【Director’s Interview Vol.493】

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優れた映像センスを持つディレクターとしてCMやMVの第一線で活躍、映画監督として『生きてるだけで、愛。』(18)でデビューした後は、フィクション、ドキュメンタリーと長編作品を手がけ、国内外で数々の賞を獲得してきた関根光才監督。その一方で、原発問題、反戦、難民問題などをテーマにした短編作品制作や、投票率をあげるための動画プロジェクト「VOICE PROJECT-投票はあなたの声」など、社会問題に対しても積極的にアクションを起こしてきた。


そんな関根監督の最新作が、日本初の新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船ダイヤモンド・プリンセスを描く大作『フロントライン』だ。あのとき人々は何を見て何を考えていたのか。映画は当時の状況をリアルに冷静に映し出していく。社会問題に対するスタンスや映像感覚など、本作の監督として関根氏はまさに適任。抜擢した増本淳プロデューサーの英断には拍手を送りたい。関根監督はいかにして本作を作り上げたのか。話を伺った。



『フロントライン』あらすじ

未知のウイルスに最前線で立ち向かったのは、我々と同じ日常を持ちながらも、眼の前の「命」を救うことを最優先にした人々だった。船外から全体を指揮するDMAT指揮官・結城(小栗旬)と厚労省の立松(松坂桃李)、船内に乗り込んだ医師の仙道(窪塚洋介)と真田(池松壮亮)、そして羽鳥(森七菜)をはじめとした船内クルーと乗客たち。彼らは、TV局の記者・上野(桜井ユキ)らマスコミの加熱報道が世論を煽る中、明日さえわかない絶望の船内で誰1人あきらめられなかった。全員が下船し、かけがえのない日常を取り戻すために──。



今回は動画版インタビューも公開! あわせてお楽しみください!



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いつか誰かが作らなければならない映画



Q:オファーが来た時の印象はいかがでしたか。


関根:プロデューサーの増本淳さんはテレビドラマでたくさんの医療シリーズを手掛けられていて、福島の原発事故を描いた「THE DAYS」(23 Netflix)などは、僕もすごく関心がありました。チャレンジングな方だという印象があり、その挑戦を尊敬していた中での今回の企画でした。


ダイヤモンド・プリンセス号の報道は僕らも見ていたし、新型コロナウイルスに関しては世界中の人たちが関わった出来事で、何らかのトラウマを抱えている人もいる。それについての映画を作ることはある意味危険かもしれませんが、いつかどこかで誰かが作らなきゃいけない。


増本さんが綿密に調査をされた脚本には、自分の知らないことがたくさん書かれていました。また、いろんな情報を鵜呑みにしていた自分にも気づかされた。これはいろんな人に知って欲しいなと。「ぜひ参加させてください」とお返事しました。



『フロントライン』© 2025「フロントライン」製作委員会


Q:増本さんとは脚本の改訂を重ねたそうですね。資料にあった関根監督の「増本さんの義憤を取りましょう」という言葉が印象的でした。


関根:増本さんが脚本を書くときに抱いた不条理への怒りはとても大切な感情。それあってこそ、この映画が始まりました。しかしこの映画では誰かの善悪を決めるのではなく、色んな人たちの視点を取り入れて描くこともご理解下さいました。増本さんが取材を重ねられて聞いたエピソードは驚くものが多く、それを一つずつ積み重ねながら脚本を詰めていきました。


事実に基づいているからこそ、そこに関わったいろんな人たちの視点を映画の中に内包していくことが大事。次にまた大きな出来事や事件が起こったときに、それをどうやって乗り越えていくかについて議論のきっかけになればいい。この映画を観た人が何か持って帰ってもらうことが大切だなと。





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