プロデューサー/オダギリジョー
Q:主演のオダギリジョーさんがプロデューサーも買って出てくれたそうですが、これはどのような経緯があったのでしょうか。
玉田:まず主演をオダギリさんにお願いしたくて、シナリオを送って読んでもらったところ、割とすぐに出演のお返事をいただきました。その後、スタッフと一緒に長崎にシナハンに行くことになったのですが、そこにオダギリさんもついてくることになった。もちろんその時点では、出演は決まっていたものの、まだ共同プロデュースといった話にはなっていませんでした。
シナハンで色々と話しているうちにキャスティングの話にもなり、オダギリさんが「こういう人とか合うかもしれませんね」とアイデアを出してくれたんです。そういった中で、だんだん共同プロデューサーとして動いてくれる流れになっていきました。シナハンから帰ってきた後ぐらいには、プロデューサーをやることが決まっていたと思います。
Q:作品規模的にこれだけのスターが集まるのは珍しいかと思いますが、そこはオダギリさんのキャスティングによるものなのでしょうか。
玉田:やっぱりみんなオダギリさんと共演したいんですよね。もちろん脚本も気に入ってくれたのでしょうが、オダギリさんとの共演ということで「出る」と言ってくれた人もたくさんいます。そういう部分でもすごく助けられました。
Q:プロデューサーとしてのオダギリさんとはどのような話をされましたか。
玉田:現場に入ってからお芝居について相談したこともありますし、仕上げの編集やダビングにも何度も来てくれました。オダギリさんは自分でも映画を作られているので、きっとそういう物作りの場が好きなんでしょうね。
『夏の砂の上』(C) 2025 映画『夏の砂の上』製作委員会
Q:長崎の街がとても美しく撮られていました。ロケ撮影はいかがでしたか。
玉田:すごく魅力的な街でしたね。長崎駅周辺だけが細長い平地になっていて、あとはすり鉢状に坂になっているんです。その坂にほとんどの住宅が密集していて、坂の中に入っていくと迷路みたいになっている。そんなところをしばらく歩いていると、急に広いところに出て海が見えたりもする。あそこでしかあり得ない変わった地形でしたね。夏で暑い最中だったので、坂の上り下りはめちゃくちゃしんどかったのですが、この“しんどい”と思う感覚込みで、そこを歩いている人物を撮るのが一番いいのだろうなと。
Q:そんな街の撮影は難しかったのではないでしょうか。
玉田:撮影の月永雄太さんは最初のシナハンも一緒に行きましたが、その時点では「捉えどころのない街だね」と言っていました。また「どこが中心なのか分からない地形だね」と。その後撮影に入る前に、「俳優とカメラの距離感はどれくらいを考えていますか?」と月永さんから質問があり、僕と月永さんと照明の秋山恵二郎さんの3人で「こんなふうにしたい。あんなふうにしたい」と、いろんな映画を引き合いに出しながら話し合っていきました。そうやっていろいろ話した辺りから、月永さんの中でも飲み込めたのかなと。撮影に入ってからは迷わずスムーズに撮っていきましたね。