リテイクを求めた理由
Q:相馬さんが演じた亜湖は、育児に追い込まれた母親で感情の振れ幅が大きな役でしたが、どのように演技・演出されたのでしょうか。
相馬:最近はプロデュースと出演の両方をやっている俳優さんも多いのですが、皆さん口を揃えて「演技に集中できなかった」と仰るんです。それを聞いて少し不安を感じていました。実際、私も撮影直前までロケ地の交渉をやったり、ロケ地周辺に挨拶回りに行ったりしていたのですが、撮影が始まると中嶋さんやスタッフの皆さんが芝居に集中できる環境を作ってくれました。
準備が忙し過ぎて中嶋さんとは役についてのすり合わせが出来ない状態でしたが、最初の企画段階で想いは一致していたので、現場では自由にやらせていただけたと思います。中嶋さんは基本褒めるタイプで、私は褒められると伸びるタイプ、そこの相性も良かったですね(笑)。
中嶋:以前から相馬さんの芝居がすごく好きでしたし、この映画の直前にも相馬さんと広告でご一緒する機会があり、そこでもすごく上手だったので不安はありませんでした。この映画の撮影初日に相馬さんのお芝居を拝見した時も、「これだ!」と確信がありました。バチバチに作り上げて持って来てくださいました。
『はらむひとびと』©はらむひとびとパートナーズ
Q:現場ではリテイクは少なかったのでしょうか。
相馬:リテイクはそんなに無かったです。でもすごく大事なシーンで、役的にかなり追い込まれてしまったのですが、それまではワンテイクOKが多かった中嶋さんが「辛いところを超えるんだ!」と、いきなりリテイクを要求してきたことがありました。それまでの中嶋さんとは全然違う感じだったので驚きましたね。病院のシーンだったのですが、どうしても義母と目線を合わせることができなかったんです。でも中嶋さんは「ここは絶対に目線を合わせて欲しい」と...。
中嶋:確かにあの状況だと、亜湖は目線を合わせることができないキャラクターなんです。その気持ちはわかりつつも、そこでグッと目線を合わせることで目に光が入ってくる。亜湖の消えかかっていた炎がフッと燃え出すような感じにしたかったので、そこは粘らせていただきました。
相馬:ほかのシーンでは「OKでーす!」と褒められてばかりでしたが(笑)、そこだけはすごく熱く言ってもらった印象がありました。