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『長崎―閃光の影で―』松本准平監督 監督として避けて通れなかった、原爆というテーマ【Director’s Interview Vol.506】

『長崎―閃光の影で―』松本准平監督 監督として避けて通れなかった、原爆というテーマ【Director’s Interview Vol.506】

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戦後80年。これまで語り継がれてきた戦争の記憶は、今でもちゃんと受け継がれているのだろうか。長い年月が経ったとしても、決して風化させてはいけないものがある。そんな中、長崎における原爆投下を描いた映画『長崎―閃光の影で―』からは、戦争の記憶を紡いでいこうとする真摯で強い決意を感じた。監督を手がけたのは、自身も被爆3世である松本准平氏。松本監督はいかなる思いで本作に挑んだのか。話を伺った。



『長崎―閃光の影で―』あらすじ

1945年、長崎。看護学生の田中スミ、大野アツ子、岩永ミサヲの3人は、空襲による休校を機に帰郷し、家族や友人との平穏な時間を過ごしていた。しかし、8月9日午前11時2分、長崎市上空で原子爆弾がさく裂し、その日常は一瞬にして崩れ去る。街は廃墟と化し、彼女たちは未熟ながらも看護学生として負傷者の救護に奔走する。救える命よりも多くの命を葬らなければならないという非情な現実の中で、彼女たちは命の尊さ、そして生きる意味を問い続ける――


Index


原爆の映画を手がけたい



Q:松本監督は長崎出身で被爆3世とのことですが、本作のオファーがきたときの印象はいかがでしたか。


松本:自分が被爆3世ということもあって、いつかは原爆の映画を手がけたいと思っていました。ただ、オファーをいただいたのは2019年頃で35歳くらいの時期、題材が題材だけに35歳だとまだちょっと早いかなと…。ですが、そういう機会をいただけたのであれば、重い職責ですが真摯に取り組みたい。途中にコロナ禍も挟んだので、企画から完成までは6年ほど掛かっています。


Q:映画監督になることイコール原爆の映画を撮るということだったのでしょうか。それとも映画監督としてやるからには、原爆の映画を撮りたいと思われたのでしょうか。


松本:後者の方ですね。原爆の映画を撮りたいから監督になったわけではありません。映画は映画として、いろんなことに魅せられている部分がありますので、他の題材でも撮りたいものがある。ただ、映画監督として生きるからには、この長崎の原爆について避けては通れない。むしろ絶対にやりたいとは思っていました。


Q:本作は「戦争の記憶を未来に繋ぐ」という使命も担っていると思います。1984年生まれの松本監督の中で、戦争・原爆の記憶とはどのようなものだったのでしょうか。


松本:長崎には被爆された方がたくさんいらっしゃいますので、そういう方々から当時のことについて話を聞く機会がありました。戦争の記憶は間接的に受け継いだものではありますが、決して忘れてはいけない。特に昨今は戦争や紛争が世界各地で起こっていることもあり、一刻も早く戦争がなくなって欲しいという思いがあります。



『長崎―閃光の影で―』©2025「長崎―閃光の影で―」製作委員会


Q:そういったお話を聞く機会は、長崎で生まれ育ったからこそという部分はあるのでしょうか。


松本:長崎や広島ではこのテーマと触れる機会が多いですし、毎日のように被爆関連のニュースが流れている。もし自分が他の地域の出身で被爆者と触れ合う経験がなければ、テーマが大きすぎて挑むのが難しかったでしょうね。僕の場合は祖父が被爆していることもあり、この作品に取り組むことは、自分のじいちゃんのことを思い出しながら撮ることでもある。とても個人的なアプローチができたと思います。


Q:今この時代にこの映画を撮ることに対して、どんな思いがありましたか。


松本:人が求めていようがいまいが、とにかく撮るべきだから撮る。80年という時間が経ってはいますが、平和への思いをつないで来た方々がたくさんいてくださったおかげで、今もなおその思いが途絶えることはありません。その思いをこの映画を通して引き継ぎたい。時代や戦後何年ということは関係なく、これは撮るべき映画だと思って作りました。





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