テイク違いの画と音を組み合わせる
Q:音が使えない箇所では、別テイクの音を切り貼りする場合もあるそうですね。
呉:そうですね。例えば5テイクあったら、画と音を一旦バラして、5テイクの画に対して5テイク分の音を当てていくんです。さらにそこにセンテンスの組み合わせも出てくるから、混乱してだんだん分からなくなってくる。それでも冷静かつ客観的に管理してくれる編集の木村悦子さんは、本当にすごいと思います。
Q:それは子どもだけではなく、大人の役者さんでもやるのでしょうか。
呉:全員やりますね。基本は口が合うテイクでやるのですが、後ろを向いている画などは全然違うテイクを使うこともあります。そこは、昔私がスクリプターをさせてもらっていた大林宣彦監督仕込みですね。しかも大林さんはフィルムでそれをやっていましたから。もうとんでもない作業ですよ。
『ふつうの子ども』©2025「ふつうの子ども」製作委員会
Q:全体を通したルックが明るくポップで、日本映画には珍しいトーンでした。撮影の田中創さんとはどのような話をされたのでしょうか。
呉:創さんとは広告の仕事でずっと一緒にやってきました。映画では『私の一週間(「私たちの声」より)』(23)という短編映画で初めてご一緒させていただき、去年の『ぼくが生きてる、ふたつの世界』でもお願いしました。『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は少しクラシカルなルックでしたが、今回はもうツヤツヤのルックで、今この瞬間のキラキラを切り撮ってもらいました。そのセンスがすごいと思いますし、キャリアもある方なのでフレキシブルにやってくれました。子どもって「何でこんな寄ってくるの?」というくらい近寄ってきますよね。その目線や距離の感じを、創さんは被写界深度などを駆使して表現してくれたと思います。