時系列を変えて各話をつなげる
Q:参考程度だったものから実際に作るところまで至ったわけですが、その後どういった経緯で動いていったのでしょうか。
山本:最初は参考程度でしたが、原作にある短編集を何か串刺せるものがあればとブレストしていました。その中でふと、それらの短編がどんどん今の時間に迫ってくるように連作に出来たら、それはすごく意味のあることではないかと思いついた。早速井上さんに伝えると「それだ!」と即答でした。そこから脚本の大江崇允さんにアイデアを話し、プロットを作っていきました。
井上:どうすれば99年の原作を現代を生きている人に届けることができるのか、それを山本さんに投げかけていました。作る側も観る側も含めて、どうすれば受け止められるものになっていくのか、そんなことを話していたら「時系列を変えてみよう」というアイデアが出てきた。それを言われた瞬間に、原作にある「アイロンのある風景」がもし2011年だったら…と、頭に浮かんでしまったんです。だったら「神の子どもたちはみな踊る」は何年だ?となり、そこは2020年にできるなと。そう考えていくと、この物語を再構築できるのではないか。そこから一気に転がり出しましたね。
『アフター・ザ・クエイク』©2025 Chiaroscuro / NHK / NHKエンタープライズ
山本:そこで僕が「かえるくん、東京を救う」に“続”をつけて続きにすれば…と、またこれ、とんでもないことを言っちゃって(笑)。
井上:いいアイデアでしたよね。「かえるくん、東京を救う」の95年の設定を生かしながら、その30年後を作ることができれば…。それで、1話だけオリジナルにすることにしました。
Q:その時系列を変えたプロットをもとに、村上春樹さんに許諾の相談をされたのでしょうか。
山本:そうですね。企画書をお送りして、許諾をいただきました。