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『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』ジェレミー・アレン・ホワイト 本人の惜しみない協力でカリスマの若い時代を全霊で体現【Actor’s Interview Vol.50】
カリスマと呼ばれるミュージシャンの映画を作るーー。ここ数年もフレディ・マーキュリーの『ボヘミアン・ラプソディ』(18)や、エルトン・ジョンの『ロケットマン』(19)、エルヴィス・プレスリーの『エルヴィス』(22)、ボブ・ディランの『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(24)など、このケースでは多くの傑作が生まれている。そこにまたひとつ、大物の新作が誕生。「ボス」の愛称で現在も人気のブルース・スプリングスティーンを主人公にした『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』(25)だ。
作品としての特徴は、スプリングスティーンのキャリアの転機となったアルバム「ネブラスカ」をリリースした、1982年前後にフォーカスした点。30代のスプリングスティーンを演じたのは、「一流シェフのファミリーレストラン」(22~ TV)で多くの賞に輝くなど、いま最も勢いのある俳優、ジェレミー・アレン・ホワイトだ。ステージ上のパフォーマンスは、当時のスプリングスティーンを彷彿。ジェレミー自身による歌声も含め、ここまでの再現度は過去のミュージシャン映画に比べても最上レベルに入るだろう。ジェレミー・アレン・ホワイトに役へのアプローチや、スプリングスティーン本人の協力などを聞いた。
『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』あらすじ
ロックの英雄、そしてアメリカの魂――50年にわたり第一線を走り続け、今も世界中のスタジアムを熱狂させるブルース・スプリングスティーン。世界の頂点に立つ直前、彼は、成功の重圧と自らの過去に押し潰されそうになりながら、わずか4トラックの録音機の前で、たった一人、静かに歌いはじめる。ヒットチャートも栄光も求めず、ただ心の奥底から掘り出した“本当の声”を、孤独と痛み、そして創造の原点とともに刻み込んだ――。
Index
カメラが回る直前まで縄跳びと腕立て伏せ
Q:誰もが知るブルース・スプリングスティーンの役を引き受けるというのは、どんな気分なのでしょう。
ホワイト:正直に言えば、最初はものすごく不安でした。僕はニューヨークのブルックリンに生まれ、ブルースの出身地であるニュージャージー州は目と鼻の先だったので、子供の頃から彼がどれだけ人々に愛されているかを知っていましたから。僕の両親はブルースと同世代で、彼の曲は“ラジオソング(自宅のラジオでつねに流れているような音楽)”だったんです。そういうわけで、とにかく最初は外見からブルースにどれだけ近づけるか、そこに集中し始めました。
Q:ギターを弾いた経験はなかったそうですね。
ホワイト:そうなんです。ハーモニカもほぼ初心者で(笑)。ですから約6ヶ月間、週に8時間とか10時間をボーカルや楽器のトレーニングに費やしました。幸いなことにブルースのステージの映像はたくさん残っているので、参考にするものには事欠かなかったです。映画の冒頭での「明日なき暴走」のパフォーマンスは、1980年のアリゾナ州テンピで行われたコンサートの映像を参考にしました。
Q:「明日なき暴走」を歌うあなたの姿は、スプリングスティーンにそっくりで驚きました。
ホワイト:ブルースのステージの映像を観ると、どれもエネルギーに満ちていて、体力の限界で臨んでいるのがわかります。ですから僕もつねにヘトヘトの状態で映ることが要求され、カメラが回る直前まで縄跳びをしたり、腕立て伏せをしたりして“疲れ切っている”状態でスタンバイしました。

『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』©2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
Q:ただ本作は、ブルース・スプリングスティーンの内面に迫るドラマがメインになっています。
ホワイト:最初の役作りではあまりに“見てくれ”にこだわり過ぎていたので、少し心を落ち着けて、1981〜82年頃の、ツアーを終えて故郷に戻ったブルースの心情に思いを馳せることにしました。カリスマではなく、一人の人間として見つめ直した結果、ブルースを演じる“足場”が固まった気がします。
Q:これまでもミュージシャンの伝記映画やドキュメンタリーは数多く作られましたが、何かインスピレーションになった作品は?
ホワイト:ピーター・ジャクソン監督の『ザ・ビートルズ:Get Back』(21)です。まるでビートルズの部屋に案内された気分になり、たとえばポール・マッカートニーが歌い出す瞬間など、大理石が削られ、彫像が生まれるような感覚を味わったのです。その感覚を僕とブルースの間で表現できないか模索しました。