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「THU Storytelling 2025」小島秀夫 “語り部”がいなくなることへの危惧 【CINEMORE ACADEMY Vol.40】

「THU Storytelling 2025」小島秀夫 “語り部”がいなくなることへの危惧 【CINEMORE ACADEMY Vol.40】

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まずは世界観ありき



Q:小島監督が作った世界に魅了されている人は世界中に多くいますが、その世界と物語はどのように作られているのでしょうか。


小島:僕の場合はまず世界ですね。奥行きがあってリアリティがあり、そこにいたいと思うような場所。そこが仮に地獄のようなところだったとしても、そこでうごめく人たちのドラマを描きたい。シェイクスピアのような人間ドラマを描こうとして、その入れ物として世紀末を選ぶ、といった作り方もあると思いますが、僕はそういう順番ではなく、先に世界観ありきです。


Q:世界観の優先順位が高い理由はありますか。


小島:僕が『マッドマックス』(79)に感激したのはキャラクターも含めて、まずはあの世界観。僕の好きな映画は大体そうですね。『2001年宇宙の旅』(68)や『ブレードランナー』(82)など、その世界観とストーリーテリングが見事に融合したものが大好物ですから。




Q:今回登壇されたセッションでも話に上がりましたが、物語をビジュアル・映像で語っていくことについて詳しくお聞かせください。


小島:小説の場合は人物の背景について文字で書いてあればそれでわかります。でもゲームは映像と音しかない。モノローグやナレーションという方法もありますが、それはしたくない。特に今の人たちは倍速で映画を見たりするので、それを嫌う節があります。“クリフハンガー”を最初に持ってきて、そこからシーンを昔に戻す手法もありますが、それも時代錯誤的なところがある。セッションでも話しましたが、ハリウッド映画の場合は、主人公が朝起きてから出かけるまでの間に、壁にかかっている写真や小道具、着ている服装などで説明していくものがあります。日本のアニメはもっとすごくて、二人の人物が廊下を歩いているファーストカットで、お互いの過去を言い合う場合がある。これはすごくカッコ悪い(笑)。アニメーションって枚数を増やせないこともあって、セリフで全部説明しちゃうんですね。感情を表すのに「私は悲しい」と言わせるなんて、そんなのダサイじゃないですか(笑)。表情や体の動きでどれだけ悲しがっているのか見せていきたい。僕はなるべくそうしたいと思っています。


マッドマックス』が売れたのもそこだと思います。“ヒューマンガス”という、背景も本名も全く分からない謎のキャラクターがいますが(笑)、ただ怒鳴っているだけでもキャラが立っていますから。今はそういったキャラクターはなかなかないですよね。




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