ゲーム作りの教科書はなかった
Q:小島監督は膨大な数の小説や映画を摂取されていますが、アウトプットするときにはそれぞれの良いところを組み合わせているのでしょうか。
小島:アウトプットするメディアによりますね。小説を書くときは小説の利点を使って文章で感情を表現しますが、脚本になるとほぼセリフだけになってくる。セリフで表現したくない場合は絵を使います。他にも音楽など、今まで見てきたものや読んできたものなど、自分が蓄えたものを使っていく。ただ僕の場合はアウトプットがゲームなので、そのまま使えないものが多い。自分自身ゲームをやって育っていないのでゲームの教科書がないわけです。でも今はゲーム作りの教科書がある。だから若い人たちは新しいものを作らないんですね。
Q:リファレンスを探すところから始まっている人が多い気もします。
小島:今はもうグーグル世代ですから、何でも検索する。例えば、スタッフに「ある映画のシーンを参考のために見てほしい」と伝えると、YouTubeでそのシーンだけを探して見る人が多い。映画は全部見ることでシーンの印象も違ってくるのですが...。とはいえ、もうそういう時代ではなくなってきている。AIになってその動きはますます加速するでしょうし、ここから先はストーリー自体もなくなる日が来るのかなと。
Q:物語を推進させるキャラクターはどのように作られるのでしょうか。
小島:キャラクターが一番重要ですね。まずは物語の中での役割を決めていきます。主人公はこういう生まれでこんな生活を送ってきた。だからこういう行動をするのだと、ディテールを細部まで詰めていきます。そこは徹底的にやります。あとは不思議と、キャラクターが勝手に喋るようになるんです。その後、俳優さんをキャスティングしてからは、細部をどんどん変えていきます。デジタルなのでディテールをどんどん上書きしていく。そこが映画とは違うかもしれません。極端な話、世界観があってその中で根付いているキャラクターに魅力があれば、どんなストーリーでも成立すると思います。