向かって左より平瀬謙太朗監督、関友太郎監督
『災 劇場版』関友太郎監督&平瀬謙太朗監督 ドラマから映画へ、確信をくれた『ガンダム ジークアクス』【Director’s Interview Vol.537】
物語の「見せ方」に強く惹かれる
Q:ドラマのあらすじや人間関係を見ると割愛した部分がかなり多そうですが、それでも映画は物語として成立しています。
関:僕たちはよく「構造・手法から作る」と言いますが、それは決してストーリーを大切にしていないわけではありません。ただ、「このストーリーは面白い」「泣ける」といった要素だけでは、どうしても興味が湧かなくて…。むしろ物語の「見せ方」そのものに強く惹かれます。「こんな見せ方の映画は初めて観た」と感じるような作品が好きなんです。映画『エレファント』(03)を観たときなどは、「物語をこんな順番で見せる手法があるのか!」と衝撃を受けました。
今回も、そういった驚きを狙っています。「この映画はどこへ向かっているのか分からない」という状態こそが、ある種の緊張感でありサスペンス。それは「誰が、どうやって殺したのか」という謎解きのようなサスペンスではなく、没入している世界がこれからどうなっていくのか分からない、足場がおぼつかないような感覚。そうした世界観そのものが持つ怖さや不気味さを表現したいと思っていました。ただ、こうした表現はドラマでは少し難しいかもしれません。ドラマはどちらかと言えば、ストーリーそのものをじっくり味わう側面が強い。映画にするからこそ、ストーリー以外の部分での表現が可能になる。その点はずっと大切にしてきた部分です。
Q:これまで「5月」が手がけられた作品は「手法がテーマを担う」というコンセプトのもと、実験的なニュアンスが強かったですが、今回はエンターテインメントに見事にハマっていました。『羊たちの沈黙』(91)や『セブン』(95)、『聖なる鹿殺し』(17)などの参照も感じましたが、そのあたりの意識はありましたか。
平瀬:これまで作った作品ではそういう参照は無かったですが、今回は「あの映画のこういうショットを撮りたいね」という共通言語での会話が多かったです。確かにヨルゴス・ランティモスなどはとても参考にしましたね。

『災 劇場版』©WOWOW
Q:日本映画でも『聖なる鹿殺し』のような世界観は成立するのだと納得してしまいました。
関:それは撮影の國井重人さんと照明の鳥羽宏文さんの力によるところが大きいです。「日常を撮っているのになぜか怖い、不気味にしたい」という狙いがあったので、わざとアングルをズラしたり、上を空けたり、端に寄せたり、あるいは意味もなく真正面から撮ったりしています。日常的な会話やシーンなのに異質なアングルで提示されるから、言葉にならない不気味さが立ち上がる…。そんなことを考えながら、撮影部とコミュニケーションをとっていました。
「日本映画っぽくない」とよく言っていただけるのですが、僕らがそうしたかった訳ではなく、今回の撮影チームから上がってくる画がその力を持っていたからではないかと思います。
Q:香川照之さん演じる男は、災いの象徴として登場しますが、実は人間ではなく「見えていない象徴・事象」なのではないかという解釈もできました。
関:そういう余地は意識しました。映画とテレビの違いはまさにそこだと思っていて、テレビは観た瞬間の「面白いか、面白くないか」が勝負ですが、映画は観た後に何度もその世界に浸りたくなるもの。僕自身そういう映画が好きなので、そんな読後感を残したいなと。あの男が、人なのか人じゃないのか、殺したのか殺していないのか、という読後感は大事にしました。その辺は匙加減ひとつで変わってくるので、“とあるカット”を入れるかどうかで最後ギリギリまで悩んだこともありました。
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監督/脚本/編集:関友太郎
1987年、神奈川県生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科修士課程修了。2012年、NHKに入局。主にドラマ番組の演出業務に携わる。20年から監督集団「5月」のディレクターとして、映画やドラマをはじめとした映像作品の監督を務める。12 年、文化庁メディア芸術祭審査員推薦作品選定、13年、イメージフォーラムフェスティバル優秀賞、17年、東京ドラマアウォード・ローカルドラマ賞受賞。

監督/脚本/編集:平瀬謙太朗
1986年、サンフランシスコ生まれ。慶応義塾大学SFC 脇田玲研究室卒業。その後、東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修士課程修了。2013年、デザインスタジオ「CANOPUS」設立。20年、監督集団「5月」発足。メディアデザインを活動の軸として、映像・映画・デジタルコンテンツ・グラフィック・プロダクトなど、様々なメディアにおける新しい表現を模索している。12年、文化庁メディア芸術祭審査員推薦作品選定、17年、朝日広告賞準朝日広告賞、20年、映文連アワードコーポレート・コミュニケーション部門優秀賞受賞。川村元気監督『百花』(22)、『8番出口』(25)では共同脚本を担当した。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『災 劇場版』
2月20日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
配給:ビターズ・エンド
©WOWOW