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『未来』瀬々敬久監督 湊かなえの原作に感じた「語る物語」【Director’s Interview Vol.549】

『未来』瀬々敬久監督 湊かなえの原作に感じた「語る物語」【Director’s Interview Vol.549】

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サスペンスを社会的問題に結びつける



Q:時系列が交錯する構成となっていますが、脚本を書かれた加藤良太さんとはどんなやりとりがありましたか。


瀬々:原作は多視点で展開されていて、もっと各ブロックが大きい。僕らの映画ではもう少しコンパクトに混ざった構成にしています。また、映画の芯となるものを一本通したかったので、主人公を決めることにしました。それで黒島さんが演じている教師から見た物語にして、途中でインタビュー風にも見える黒島さんのカメラ目線の語りを入れることにしたんです。そうやって一本芯を通すことで、映画としての形となっていく。多視点ということで散漫になりがちなところをどうやってギュッとしたものにしていくか、そこの話はよくしていました。


また、小説では真珠のお兄さんが登場して、そのお兄さんと真珠と良太の三角関係で物語が進んでいくのですが、これだけ登場人物が多いと少し多牌(ターハイ)になってしまう。映画ではこのお兄さんを削ったように、登場人物の人数も調整していきました。 


Q:リアリティからは距離を取った客観的な視線で描いているように感じましたが、意図されたものはありましたか。


瀬々:それは湊さんの文体の特色でもあるんです。湊さんの小説は、いわゆるリアリズムな語り口ではない。『告白』などもそうですが、主人公の独白でずっと綴られていて、そこがファンタジーと言うか、独得の浮遊感があってリアリズムと少し違う。その感覚は出した方が良いと思い、工夫した部分はあります。例えば、章子たちが着ている服などのビジュアルには少し色目を多く使ったりしました。また、劇中にドリームランドというテーマパークが出てきますが、その夢の国の世界観と現実世界の往復運動みたいな感じにする必要があると感じ、どこかドリームランドというものが成立するような世界観にしようとは思っていました。 



『未来』Ⓒ2026 映画「未来」製作委員会 Ⓒ湊かなえ/双葉社


Q:構成の複雑さゆえ、キャラクター設定の分かりやすさも意図されていたのでしょうか。


瀬々:そうですね。キャラクター自身はシンプルにしています。特に悪い人たちには、そういったシンプルさを求めたと思いますね。


Q:いじめや虐待という社会的な問題を描きつつも、謎に迫っていくミステリーの要素も大きくあります。二つのバランスはどのように取られたのでしょうか。


瀬々:今回の登場人物たちの多くは“心の傷”を持っている。それがネグレクトや暴力という形で描かれるわけですが、一方で、「何故この人はこうなってしまったのか」という問いがある。それがある種のサスペンスであり、謎の大きな要素になっていて、そこが徐々に解き明かされていく物語となっている。最終的にはそれが感動に結びつくわけですが、おそらく湊さんの小説の多くはそのように構成されています。「こんな傷を持った人が、なぜこんな行為を起こしてしまったのか」という問いに対し、湊さんはいつも社会的な問題に結びつけていく。それが小説自体の中でうまくリンクしていて、映画もその部分、ミステリーと社会的な問題の融合を目指しました。


また今回は“三都市物語”にしたくて、それぞれ異なる3つの場所に3つの物語があり、最終的にそれらが繋がっていくという構造にしています。映画の構造自体が謎解きになっている部分はありますね。そこは『めぐりあう時間たち』(02)をヒントにしました。 





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