これまで多くの作品が映像化されてきた作家・湊かなえ。彼女がデビュー10周年に発表した自身の集大成となる傑作ミステリー小説がついに映画化。それが本作『未来』だ。誰が少女を守るのか。湊かなえ史上、もっとも過酷で、もっとも切ないミステリー。ある日、届いた「未来のわたし」からの手紙。それは人生のエールになるはずだったーー。
映画化を託されたのは、瀬々敬久監督。少女たちが置かれた悲惨な境遇を描きつつも、映画的カタルシスを駆動させて収斂させていく手腕はさすがである。瀬々監督はいかにして『未来』を作り上げたのか。話を伺った。
『未来』あらすじ
複雑な家庭環境で育ちながらも、祖母の期待に応えて教師になるという夢を叶えた真唯子(黒島結菜)。彼女の教え子・章子(山﨑七海)のもとにある日、一通の手紙が届く。差出人は――「20年後のわたし」。半信半疑のまま返事を書くことで、父(松坂桃李)を亡くした悲しみや、心を閉ざした母(北川景子)との孤独な日々に耐えていた章子だが、母の新しい恋人(玉置玲央)からの暴力、壮絶ないじめ、そして信じがたい事実が彼女を容赦なく追い詰めていく。深い絶望の中、章子は唯一心を通わせる友人・亜里沙(野澤しおり)と「親を殺す」という禁断の計画を立てるのだった。そんな章子を救おうと真唯子は、残酷な現実と社会の理不尽さに押しつぶされそうになりながら、それでも手を差し伸べようとするが――。誰もが過酷な運命に呑み込まれようとする中で、「未来のわたし」からの手紙が導くのは、希望か。それとも、さらなる絶望か――。
Index
「語りの物語」を映画化する
Q:湊さんの原作を読んだ印象はいかがでしたか。
瀬々:湊さんの小説は映画化される前に読んだものも多く、世間では「イヤミス」などと言われていますが、どこか「語りの物語」が多い印象がありました。『告白』もそうでしたが、物語自身がすごく重層的になっていて、いろんな視点で描かれていく。そこが面白いと思っていました。今回は「書く」ということがテーマになっていますが、「書く小説」というよりは「語る小説」とでも言うような、そういう部分が非常に興味深かった。ぜひやりたいと思いました。
私が昔ピンク映画を撮っていた時は、実際にあった事件をモチーフにしたりしていましたが、湊さん自身、かつて学校の先生をされていて、「今本に書いていることはほとんど私の経験です」と仰っていました。彼女自身が持っている社会的な視点にも興味があり、そこもやりたいと思った理由の一つです。

『未来』Ⓒ2026 映画「未来」製作委員会 Ⓒ湊かなえ/双葉社
Q:原作を読んで面白いと感じるときは、映画化も念頭に浮かんでくるのでしょうか。
瀬々:そうですね。その本が持つ世界観が自分に刺激を与えてくれる。今回は邪悪な人々が結構出てきますが、その邪悪さの後ろにも理由や切実な問題がある。そういう心情が描かれるのは湊さんの小説ならでは。そこにもすごく興味を持ちました。
Q:原作モノの映画化を多く手掛けられていますが、映画化出来るか出来ないかの判断の基準はありますか。
瀬々:「この小説を映画化してみませんか?」とオファーされることはよくあります。でも、正直乗れない時もある。ではその違いは何かと言うと、小説としての面白さもありますが、書いている人の視点に乗れるか乗れないか。そこだと思いますね。