ロヒンギャの幼い姉弟が、国境を越える過酷な旅に出るーー。圧倒的な没入感で2人の旅を追体験する本作『LOST LAND/ロストランド』は、同時代のこととは思い難いようなロヒンギャの実情を観る者に容赦無く突き付けてくる。ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門にて日本人監督初の審査員特別賞をはじめ、各国の映画祭で続々と受賞を重ねる本作を手がけたのは、移民の物語を描いた『僕の帰る場所』(17)『海辺の彼女たち』(20)で国内外の注目を集める藤元明緒監督。
藤元監督はいかにして『LOST LAND/ロストランド』を作り上げたのか。取材途中、本作の渡邉一孝プロデューサーにも参加してもらいつつ、藤元監督に話を伺った。
『LOST LAND/ロストランド』あらすじ
難民キャンプで暮らす5歳のシャフィと9歳の姉ソミーラ。二人は家族との再会を願い、叔母と共に遠く離れたマレーシアへ旅立つことに。パスポートを持てない彼らは密航業者に導かれるままに漁船へと乗せられる。自然の猛威や人身売買の危機に阻まれながらも、姉弟は過酷な道のりを必死に乗り越えていく。
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ミャンマーとの出会い
Q:本作も含め、これまでもミャンマーやベトナムなど東南アジアの移民や難民を描かれていますが、何か理由やきっかけはあったのでしょうか。
藤元:東南アジアのことを学んでいたとか、よく海外に行くとか、そういったことは全くありませんでした。たまたま友達になったミャンマー人の話がモデルになっていたり、僕の妻がミャンマー人なので、東南アジアの話をよく聞くことがありました。そうやって自分の身の回りの出来事から映画を立ち上げた結果ですね。
Q:若い時から映画を作ろうとされていたのでしょうか。
藤元:大学卒業後に映像系の専門学校へ行き、そこで映画の魅力と出会いました。それまではハリウッド系の作品を中心に観ていたところに、初めてアートフィルムに出会った。そこで“どハマり”してしまいました。それまではミニシアターに馴染みがなかったんです。学校の授業で大阪の「シネ・ヌーヴォ」という映画館に連れて行かれて、空間も含めてすごく素敵だなと。「僕もいつかこういうところで上映したい」と、映画の道に進むことにしました。

『LOST LAND/ロストランド』©2025 E.x.N K.K.
Q:それで実際に自分で映画を撮ろうとして、自身の身の回りにあったミャンマーのことを題材に選んだと。
藤元:いや、実は最初はお題だったんです。「ミャンマーで映画を撮る人募集」という企画がありまして、それで「ミャンマー」というお題が降りかかってきた。ミャンマーがどこにあるかも分からない中で応募したところ、運良く通過することができ、そこからミャンマーと繋がるようになりました。その後たまたまミャンマー人と結婚したり、ミャンマーで仕事が増えてきたりして、だんだんと縁深くなっていきました。
Q:ミャンマーと日本は頻繁に行き来されているのでしょうか。
藤元:そうですね。2018年頃は1年間現地に住んで、現地のバラエティ番組などを撮っていました。その後、2019年に帰国した後は、コロナ禍になったり現地でクーデターが起きたりしたため、そこからは行っていません。