なぜドキュメタリータッチなのか
Q:ドキュメンタリーと見紛う撮影手法は本作で更に強くなった印象もありますが、この手法を使う理由を教えてください。
藤元:リアリティを画面の中に再現したいというよりも、「観客の中のリアルをどう育てるか」という出発点がありました。そこがドキュメンタリーとは違うところかなと。この映画を見た時に「自分の住む世界で起きていることだ」という想像力を働かせるためには、フィクショナルすぎても良くない。リアルかどうかよりも、その場に存在している説得力のようなものを高める手法だと思っています。
Q:実際の現場では芝居とカット割りなどはどのように決めて撮影されているのでしょうか。実際のドキュメンタリーのように長回しを多用されているのでしょうか。
藤元:1、2作目ではものすごい長回しをしていて、ワンテイク2時間ということもありましたが、今回は結果的に長回しはそこまで多くなく、あっても2、3シーンくらいでした。長回しは出演者の負担が大きいので、当事者の方々は疲弊してしまう。基本的には普通のカット割りをしています。ただし子供たちが会話するシーンなどは姉弟ならではの自然な会話にしたかったので、即興が多く多少長回しになっています。それ以外は、事前に準備したカメラポジション通りに撮っていて、長回しをするというよりも「行動数を増やす」ということを意識しました。
ワンショットの中にA、B、Cというアクションがあったら、その前後の動きを増やして、段取りを覚えられないようにさせるんです。段取りっぽく見えないように、前後のアクションで隠しているという感じです。行動数が多くなってくると、出演者もその場その場にしか反応しなくなるので、それも一つの演出ですね。

『LOST LAND/ロストランド』©2025 E.x.N K.K.
Q:撮影はミャンマー周辺の国々で行われたとのことですが、海上から森の中、街の中まで、オールロケですよね。特に海のシーンなどは大変だったのではないでしょうか。
藤元:毎朝沖に出て撮影しました。普通はプールスタジオなどで撮ったり、陸に船を置いて海を全部CGで描いたりするのですが、予算もないので「沖に出るしかない!」って感じでした。船上は狭く、アングルは限られていました。動きも取れないので、そこをどう見せていくかは結構大変でしたね。一番危なかったのはクラゲがいたこと。ダイバーもスタンバイして撮影していましたが、クラゲだけはどうしようもなく...。でも怪我もなく撮影できてよかったです。
Q:本作は16mmフィルムで撮影されたかのような質感で撮られています。そこのこだわりについてお聞かせください。
藤元:デジタルの良いところと16mmフィルムの質感をどうミックスさせていくか、そこの調整に力を入れました。映画を「観客が誰かの記憶を見ている」という構図にするためには、16mmフィルムの質感がすごく相性が良い。それはこの作品に限らず、ずっと思っていることです。今回はフランスの有名なカラーグレーダーがついてくれて、粒子の質感や色だけでなく、輪郭の形や滲み方も含めてフィルムに寄せています。本物の16mmフィルムのスキャンデータから粒子を引用し、発色はデジタルならではの良さを活かしています。16mmフィルムは画面の脇のピントが少し外れているのですが、そんなフィルム特有の形状も仕込んでいます。