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『LOST LAND/ロストランド』藤元明緒監督 これは自分の住む世界で起きている物語【Director’s Interview Vol.547】

『LOST LAND/ロストランド』藤元明緒監督 これは自分の住む世界で起きている物語【Director’s Interview Vol.547】

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当事者が出演する意義



Q:演者としてロヒンギャの方々が参加されていますが、役者ではない当事者に演じてもらうことの意図についてお聞かせください。


藤元:ロヒンギャを題材にした映画やドラマはこれまでもありますが、そのほとんどがロヒンギャではない人が出演されているもの。実際のロヒンギャ語を話す人々が出演する映画を残すことは、映画史的にとても重要だと思いました。彼らの本当の声や思いを届けるという意味では、ロヒンギャの人々に出てもらうことは外せない要素であり、この企画の前提となっていました。ロヒンギャにプロの俳優はいないので、必然的に一般の方々に出演していただくことになった次第です。


Q:キャスティングはどのように進められたのでしょうか。


藤元:ロヒンギャの方々に、なぜ撮りたいのかという意図や、この映画がどう上映されていくのかといった説明を行い、オーディションではなく、皆さんの紹介ベースでキャスティングを進めました。主人公の2人に関しては、取材中に偶然見かけた姉弟に一目惚れしてしまったんです。当初は、旅を物理的に乗り越える身体を持った14、5歳の子供を想定していたのですが、あの姉弟からは素晴らしい予感しかしなかった。それで急遽設定を変更して出演してもらいました。


Q:姉弟のどんなところに惹かれたのでしょうか。


藤元:やはり2人が持っているエネルギーですね。とてもポジティブで、太陽のような姉弟だったんです。暗く悲劇的なストーリーの中で、存在感のある2人になってくれるのではないか。良い意味でコントラストがつくかもしれないと、希望を持ってキャスティングしました。カメラテストでの演技の勘も良く、特にお姉ちゃんは素晴らしかったですね。



『LOST LAND/ロストランド』©2025 E.x.N K.K.


Q:本人たちには「演じる」という概念はあったのでしょうか。


藤元:弟は4〜5歳くらいだったので、最初は映画のことも分からず、“お姉ちゃんが何かやっている”くらいの認識だったと思います。ですが、撮影を通してだんだんと理解しているようでした。お姉ちゃんは最初から演技に興味があると言っていて、かなり意識が高かったですね。


Q:2人にはどのように演出されたのでしょうか。


藤元:基本的なアクションや行動のみを伝え、「こういう感情を表現してほしい」といったことは絶対に言いませんでした。シンプルに「ここで倒れる」とか、「頑張ってバナナを探して弟に渡す」といった大枠だけを伝えて、そのシチュエーションで彼らが自由に動くのを撮影していきました。監督が演出したというよりも、“状況や環境が子供たち演出している”というスタイルでした。


Q:弟が「水を飲みたい」とぐずるようなシーンもあります。そういったシーンはどのように撮影されたのでしょうか。


藤元:そのシーンでもこちらからセリフの指示などはしていません。カメラが回っている時に彼が自然に言った言葉です。ただし、「いやだ(ノー)」と言うシーンは何度も練習しました。そうやって自然に発した言葉と練習したセリフとが絡み合って構成されています。


Q:大人の皆さんも演技未経験ですが、大人への演出はいかがでしたか。


藤元:大人も同様のスタイルでした。大人も子供も、練習が必要なところは頑張ってセリフを覚えてもらいましたが、セリフを覚えるのは子供の方が早いんです。「しっかり演技をして、セリフをしゃべり、間も取るというのは無理だろうな」と思いながら練習したら、なんと一発OKでした。子供ってすごいなと感動しました。逆に大人の方がNGを出したりしていましたね(笑)。





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