世界の潮流、多国間共同製作
Q:今回は日本=フランス=マレーシア=ドイツの合作です。出資を募る活動はどのような動きだったのでしょうか。
渡邉:私たちが海外で撮影するためには、日本だけで完結することはできない。撮影現場に近いところからチームを探しました。そこから資金的にも協力できるプロデュースチームが構成できるか。インディペンデント映画なので、脚本に対しての優先順位をつけて、その実現可否を探りながらチームを作っていきました。
藤元:ポストプロダクションでフランスの助成金がついたのは大きかったですね。おかげで仕上げをフランスで行うことができて、優秀なクリエイターが参加してくれました。
渡邉:最近は多国間共同製作が増えてきています。昔は合作といえば大型予算で2〜3カ国といった形でしたが、最近は中規模やマイクロバジェットの予算でも、4〜8カ国になる場合もある。そういった意味では、本作は時流の中にいる映画なのかもしれません。
藤元:ベネチア映画祭に行くと、1カ国製作の作品は日本くらいしかなかったと思います。
Q:まずは各国の映画会社にアプローチして、そこから各国の助成金を申請していくという流れなのでしょうか。
渡邉:企画内容や規模にもよると思いますが、私たちの場合は映画祭などでフィルムメイカーに会いに行き、自分たちの映画を見てもらったり意見交換をしたりして、友達の感覚で先方の嗜好を探っていきます。彼らに私たちの企画がハマれば、そこからチームが組成されていく。そこからは「私はこの助成金にアクセスできるよ」「僕はこのマーケットにアクセスできるよ」という感じで、できることが増えていきます。また、助成金ありきで「ここの助成金を取りたいから制作会社を探す」という形でチームを組成することもあるようです。

『LOST LAND/ロストランド』©2025 E.x.N K.K.
Q:藤元監督が影響を受けた映画や好きな監督を教えてください。
藤元:ヴィターリー・カネフスキー監督の『動くな、死ね、甦れ!』(89)というソ連の映画です。他にも『ミツバチのささやき』(73)や『ハッシュパピー 〜バスタブ島の少女〜』(12)など、子供を描いている作品に心惹かれます。日本では、塚本晋也さんが圧倒的な存在として僕の中にいます。その作り方や軸のブレなさはすごいですね。寺山修司さんの『書を捨てよ町へ出よう』(71)のような、映画の自由さにもすごく惹かる部分があります。
Q:既存の枠に収まらない部分に影響を受けられている気がします。
藤元:職業監督ではなく映画作家として生きていて、大事にしているものが自分の中から出て来ている作品を作り続けている人。流行りや私情に左右されない人に惹かれます。自分自身もそうなりたいと思っています。
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監督/脚本/編集:藤元明緒
1988年、大阪府生まれ。ビジュアルアーツ専門学校大阪で映画制作を学ぶ。在日ミャンマー人家族を描く初長編『僕の帰る場所』(2018年)が第30回東京国際映画祭アジアの未来部門 作品賞&国際交流基金アジアセンター特別賞を受賞。2021年、ベトナム人技能実習生を描く長編第二作『海辺の彼女たち(日本ベトナム国際共同製作)』を公開。同作品はPFF第3回「大島渚賞」、2021年度「新藤兼人賞」金賞、第13回TAMA映画賞最優秀新進監督賞、第31回日本映画批評家大賞・新人監督賞などを受賞。主にミャンマーなどアジアを舞台に合作映画を制作し続けている。
プロデューサー:渡邉一孝
配給会社、俳優事務所、映画祭のスタッフを経て、日英翻訳のコーディネートや映像字幕制作、自主映画の制作を行う。2014年に映画の企画から配給/セールスおよび翻訳字幕制作を行う株式会社E.x.N(エクスン)を設立。製作/プロデュース作に『黒い暴動♥』(16/宇賀那健一監督)、藤元明緒監督作全て。配給作に、『ミャンマー・ダイアリーズ』(22/ミャンマー=オランダ=ノルウェー)。山形国際ドキュメンタリー映画祭ヤマガタ・ラフカット!部門プログラムコーディネーター。福井のアーツカウンシルのディレクター。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『LOST LAND/ロストランド』
4月24日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、kino cinéma新宿、ポレポレ東中野ほか全国公開
配給:キノフィルムズ
©2025 E.x.N K.K.