国籍のない人々、ロヒンギャ
Q:本作はいつどこで撮影されたのでしょうか。
藤元:企画自体は2023年からスタートして2024年に撮影しました。 “ロヒンギャ”はミャンマーではタブーなので、この題材での現地撮影は不可能。極端な言い方になりますが、イスラエルのど真ん中で「パレスチナの映画を撮りたい」と宣言することに近いかもしれません。それで周辺国のバングラデシュやタイ、マレーシアで撮影を行いました。
Q:“ロヒンギャ”がタブーになっていることに驚きました。ミャンマーでは皆そのことを話したがらないのでしょうか。
藤元:ミャンマーでロヒンギャの話をしている人に会ったことがありません。2017年にミャンマーの西側でロヒンギャの大虐殺があったのですが、現地でその話題は一切出ませんでした。大変な状況が起きているのに、「ミャンマーは民主化に進み盛り上がっている」という明るい雰囲気になっていて、すごく異様な空気を感じました。「ロヒンギャについてどう思う?」とは絶対に切り出せない空気でした。

『LOST LAND/ロストランド』©2025 E.x.N K.K.
Q:そういった状況の中で、どのようにロヒンギャのことを学ばれたのでしょうか。
藤元:ロヒンギャの方々に会うことはなかったので、最初はニュースで聞く程度の知識しかありませんでした。映画化したいと本格的に思うようになったのは、クーデター以降ですね。その頃ミャンマーの支援活動を始めたのですが、「ミャンマーの状況に対して声を上げているのに、ロヒンギャに対しては声を上げていない」という自分のダブルスタンダードな態度にすごく罪悪感がありました。このままでは自分の言葉や作品に説得力がなくなってしまう。
すでに2作撮って実績も積み、今だったらロヒンギャの人たちを題材にした映画を撮れるのではないか。もうミャンマーには入れない状況だったこともあり、思い切ってチャレンジしました。そこからは飛び込みに近い形で、海外にいるロヒンギャの方々に取材アポを取りました。皆さん快く取材を受けてくださり、それを元に脚本化を進めていきました。
Q:海外で暮らしているロヒンギャの方々はどのような印象でしたか。
藤元:撮影後にバングラデシュにある難民キャンプに行ったのですが、そこは何もかもが足りておらず、とても危険な状況で、皆さんかなり沈んでいる様子でした。他の国で暮らしている方は、バングラデシュと比べると安全ではあるので、子供たちものびのびして明るい空気でした。ただし国籍がないので、どこにいても非正規滞在となってしまう。それがロヒンギャの特徴的な部分ですね。
日本では義務教育があって子供たちは学校に通えるのが当然ですが、ロヒンギャの子供たちは学校に通うことができません。大人たちも正規の仕事に就くことは難しく、裏ルートのような形で働いている人が多い。最初はすごく驚きました。支援者はいるものの、支援は全然行き届いていない状況です。