1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『シラート』オリベル・ラシェ監督 リスクを恐れず、身体に浸透する映画を【Director’s Interview Vol.556】
『シラート』オリベル・ラシェ監督 リスクを恐れず、身体に浸透する映画を【Director’s Interview Vol.556】

『シラート』オリベル・ラシェ監督 リスクを恐れず、身体に浸透する映画を【Director’s Interview Vol.556】

PAGES


身体によりよく浸透する、フィルムで撮られたイメージ



Q:ロードムービーの一面もありますが、出てくる車がとても魅力的でした。撮影はいかがでしたか。


ラシェ:最初に私たちがやったことは、同じモデルのトラックを2台ずつ買うことでした。トラックの外や中にカメラを設置するのには非常に時間がかかりますが、2台あればより早く撮影できる。また、古いトラックなので何かしら故障するだろうことも分かっていましたから(笑)。デジタルエフェクトも最小限で、基本的にほとんどのシーンは実際に撮影しています。


『シラート』には70年代映画のテイストがあります。70年代、世界は二極化し、多くの戦争が起こりました。そんな当時の恐怖や夢をすくい取り、時代のエネルギーを持った映画が多かった。私たちは現代の『イージー・ライダー』(69)を作りたかったのです。 傲慢に聞こえるかもしれませんが、意図というのは常に傲慢なもの。達成できるかどうかは別として、挑戦しなければならないのです。


Q:砂漠がとても美しく捉えられていました。16ミリフィルムで撮っていると知って驚きました。35ミリフィルムかと思うほど綺麗な映像ですね。


ラシェ:現像がとてもうまくいきましたね。そこは幸運でした。今の人は粒状感に慣れていないので、いくつかのシーケンスではプラグインを使って粒状感を少し取り除きました。それで35ミリのように見えるのだと思います。


フィルムとは、光によって乳化された銀という高貴な素材です。フィルムでの撮影・現像は錬金術のようなもので、まさに魔法のプロセス。そして、フィルムで撮られたイメージは人間の身体によりよく浸透します。身体もまた化学だからです。ピクセルではありません。そうやって人の身体の中に入り込むような映像を撮らなければならない。そうでないと永遠に人の中に残りませんから。



『シラート』© 2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFÓNICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.,FILMES DA ERMIDA, S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L.,4A4


Q:映画祭での質疑応答で「日本人は直接的な表現をあまりしませんよね」と、ラシェ監督が日本人の本質を突いていて驚きました。日本や日本の映画にはどんな印象がありますか。


ラシェ:非常に多くの印象を持っています。中でも映画は文化的拠点のひとつだと考えていて、小津安二郎や黒澤明の作品が好きですし、新藤兼人も大好き。特に『裸の島』(60)は私のお気に入りのひとつです。私は農家の息子ですが、世界中の農家は皆同じ価値観を共有しているという事実があり、あの映画が持つ哲学に惹かれます。また個人的には、精神修養の実践として「俳句」にとても興味を持っています。西洋人は芸術に多くの「私(自我)」を込めますが、俳句の実践とはその「私」を取り除き「ゼロ」になること。それはまるで(『裸の島』の)農民のようです。


さらに、私は日本にある卓越性にとても関心があります。日本人が行う作業すべてがまるで芸術作品のよう。料理や大工仕事、事務作業など、すべてが正確に犠牲を払って行われ、日本人の皆さんがすることはすべて芸術となっている。卓越性を持って物事を行うことは人間の自然な状態であり、私はとても尊敬しています。私もぜひ日本に住みたいですね。ここにはある種の風味があり、私を酔わせ、刺激してくれます。そして会う人々たちに感動させられてしまうのです。




『シラート』を今すぐ予約する↓







監督/脚本:オリベル・ラシェ

1982年、パリ生まれの映画監督、脚本家。スペインでオーディオビジュアルコミュニケーションを学び、移り住んだモロッコのタンジールで『Todos vos sodes capitans(原題)』を自主製作。同作はアトラス山脈で撮影され、カンヌ国際映画祭批評家週間のFIPRESCI(国際批評家連盟賞)を受賞した。その後、故郷ガリシアに戻り、オス・アンカレス山脈の奥地で撮影した『ファイアー・ウィル・カム』が2019年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞。『シラート』は彼の長編4作目となり、1作目のカンヌ上映から15年後にはすべての部門で作品が上映され受賞を果たした。本作『シラート』はサハラ砂漠で撮影され、コンペティション部門に出品した初めての作品となる。 



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『シラート』

新宿ピカデリー、ヒューマントラスト有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにてロードショー中

配給:トランスフォーマー

© 2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFÓNICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.,FILMES DA ERMIDA, S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L.,4A4

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『シラート』オリベル・ラシェ監督 リスクを恐れず、身体に浸透する映画を【Director’s Interview Vol.556】