2026年5月25日(月)~6月10日(水)、「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2026(SSFF & ASIA 2026)」が東京で開催。6月30日(火)まではオンライン会場で引き続き開催中だ。今回は「シネマエンジニアリング」をテーマに、世界各国から集まった5,000ほどの応募の中から選び抜かれた、約250作品のショートフィルムが堪能できる。
CINEMOREでは6月6日(土)~ 6月9日(火)の4日間に渡り、会場のWITH HARAJUKUにてPodcastの公開収録を実施。映画祭に作品を出品された監督やプロデューサーをゲストに迎え、話を伺った。
今回のゲストは『shady』を撮った山田日貴監督。若者が精神的・金銭的に追い詰められることが増えた現代、「闇バイト」をテーマにした山田監督。「人間」を撮ることにこだわった映画作りの裏側とは。
※本記事はCINEMORE Podcastで配信した内容をテキスト化・編集したものです。Podcastでもぜひお楽しみください。
『shady』あらすじ
廃墟にいる正志と光は「闇バイト」として4人組で空き巣を遂行していたが、犯行は失敗。電話でボスのタケダに助けを求めるも音信不通。拠り所を失った2人(宮本和武、塗茂るな)は廃墟に逃げ込んでいた。そんな中、光はある企てを正志に持ちかける。
Index
膨大な背景から作られる16分
Q:本作のテーマは「闇バイト」ですが、着想を得たきっかけを教えてください。
山田:3年ほど前から、闇バイトが社会問題として注目され始めました。マルチ商法や投資詐欺、ホスト依存なども話題になっていて、カフェで怪しげな会話を見かけたりもしますが、そういうものがすごく気になっていたんです。若者が精神的・金銭的に追い詰められることが増えたと感じるとともに「この人たちはなぜこんなことに盲信してしまうのだろう」と考え始めた。それがこの映画を作り始めたきっかけでした。
Q:物語の一部を切り出したような構成になっています。脚本・構成はどのように作られたのでしょうか。
山田:最初に長編ができるくらいの膨大な背景やストーリーを作り、そこから事件とその後の部分だけを切り取りました。かなり大変な作業でしたね。
Q:画面のトーン、陰影や光、アングルなどに強いこだわりを感じます。撮影はどのように進められたのでしょうか。
山田:「トーンは暗めで、とにかく光を意識して撮影してほしい」と指示を出して、それを元に撮影監督や照明担当が作ってくれました。撮影スタッフが優秀だったことに尽きますね。撮影監督は普段から一緒にやっている方なので意思疎通もしやすく、僕の求めている画をいつも完璧に作ってくれるんです。
Q:ラストシーンなど、美しい場所が多く、ロケーションも気になりました。
山田:15分程度の作品ですが、ロケーションはかなりこだわりました。埼玉、栃木、千葉、茨城などを転々と撮影したので、東京ではほとんど撮っていません。廃墟も元々あった場所を活用させてもらいました。
Q:追い詰められた闇バイトのメンバーの演技は迫ってくるものがありました。演出やリハーサル、本読みなどは綿密に行われたのでしょうか。
山田:セリフがほとんどなかったので、本読みやリハーサルはしませんでした。ほぼ一発撮りで、役者の皆さんは相当プレッシャーだったと思います。夜中から撮影が始まったのですが、日の出の場面を撮るときには役者さんの体力も限界がきていて、おそらくワンテイクしか撮れないだろうなと。その時の現場はかなり緊張感がありましたね。役者さんが気持ちを作る時間も必要で、いつものように「用意、ハイ!」みたいに撮ると気持ちが切れてしまうだろうと思ったので、カメラを回しっぱなしにして役者さんのタイミングに合わせました。
Q:出演者の方々には、事前にキャラクターの背景などは話されましたか。
山田:キャラクター毎に膨大な量の履歴書を作って「なぜあなたはこの犯行に及んだのか」を撮影前にディスカッションしました。そこにかなりの時間を割きましたね。ただ、本編をご覧いただくと分かるのですが、その辺りは全てカットしています。「なぜこういうことが起きたのか」ではなく「人が拠り所を失った時にどうしてもしがみついてしまう姿」=「人の性(さが)」のようなものを描きたかったんです。だからそういうシーンを集中して撮り、それ以外の背景部分はカットすることにしました。