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『メモリィズ』坂西未郁監督 × 柄本佑 記憶と記録を映画にする【Director’s Interview Vol.562】

『メモリィズ』坂西未郁監督 × 柄本佑 記憶と記録を映画にする【Director’s Interview Vol.562】

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人間の肯定、場所の肯定



Q:2ヶ月間の何気ない日常が描かれているだけにも関わらず、人生そのものが凝縮されているようでした。それは撮っている時に感じるものなのでしょうか。映画の完成形はどこまでお2人の頭の中にあったのでしょうか。


坂西:佑さんは、風が吹いたらそっちを見てくれて、犬に引っ張られたら影響を受け、音が鳴ったらそっちを意識してくれました。そういった影響を全く受けずに、ただ歩いていくという方法もありますが、何も決めていなかった分、その積み重ねの豊かさが出ていた。イッセーさんと佑さんの会話もそうですし、そういったリズム感や空気をそのまま残すことができました。全体的な構成は最初から僕の脳内にありましたが、それを前提にしつつも、結局は今話したような積み重ねが映画になっていく。そういう思いで現場にいました。


Q:個人的な感覚かもしれませんが、感情移入を通り越して、雄太の視線に完全に同化してしまっているような不思議な感覚がありました。何か意図したものはありましたか。


坂西:誠の住む大分県に雄太は何度か行ってはいますが、生活して根付くのは初めて。でもその設定は、映画では詳しく説明していません。雄太が義父にやってあげていることを見せることで、2人の関係性に対して観客のイメージが湧くのではないか。観客も雄太と一緒に体験していくようにならないかなと。


Q:その設定は柄本さんにも説明してなかったのでしょうか。


柄本:説明してもらってないよね。


坂西:「雄太が大分に来たのは数回」くらいの話しかしてないですね。



『メモリィズ』©2026LittleMore


Q:それを踏まえて、雄太という人物として“ただそこにいた”という感じだったのでしょうか。


柄本:そうですね。でもなんだろう。「場所の肯定」というのかな。雄太自身は東京で生活しているのに、わざわざ東京からその場所へ行き、しかもそこまで仲が良いわけでもない義父の元へ、なぜか自分から「行く」と言うわけです。そういう変な奴なんです(笑)。監督の中にあるかは分からないですが、そういった「人間の肯定」や「場所の肯定」みたいなものがあるんじゃないか。そんな気がしていました。


それを感じたのは、僕が誠さんのジャケットを借りるシーン。散歩に連れて行った犬のこむぎに「借りちゃった」と言って見せて、トンネルを歩いていくところですね。その時に、テストか本番かで、僕が「(ジャケットが)ちっちゃいな」みたいなことを言ったんですよ。そうしたら監督が割と強めに「『ちっちゃいな』だけはやめてください!」と言ってきて(笑)。


そう。だからそんな些細なことだけれど、きっとこの映画は、受け入れていくし、肯定していくんだなと。「ちっちゃいな」と言うこと自体は別にマイナスな意味ではないけれど、たとえ言葉ひとつであっても、そういったものは落としていく意識があったのだと思います。それがどこか、この映画のエッジの効いた部分になっているんじゃないかな。単に優しいだけじゃなくてね。リアルなら言ってしまう「ちっちゃいな」と言う言葉を、あえてなくすことでエッジが効いてくる。そういったことにも繋がっている気がしますね。


Q:完全に自由だったのではなく、そういった細かい調整が仕込まれていたのですね。


坂西:まぁ、そこまでではないですが(笑)。「ちっちゃいな」に関しては雄太が思う感情として明確にあるんです。ただ、観ている人にはもう少しフラットに見てほしいという気持ちがありました。雄太が「小さい」と言ってしまうと、観客もその脳になってしまう。良い意味でも悪い意味でも、それに引っ張られず、観客の自由さを残したいと考えていた部分はありますね。




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