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  3. 『ハッシュ!』『ぐるりのこと。』<4Kリマスター版> 橋口亮輔監督 元気あふれる人間賛歌、圧倒されるエネルギー【Director’s Interview Vol.576】
『ハッシュ!』『ぐるりのこと。』<4Kリマスター版> 橋口亮輔監督 元気あふれる人間賛歌、圧倒されるエネルギー【Director’s Interview Vol.576】

『ハッシュ!』『ぐるりのこと。』<4Kリマスター版> 橋口亮輔監督 元気あふれる人間賛歌、圧倒されるエネルギー【Director’s Interview Vol.576】

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シナリオ通りのセリフ、役者が作ったセリフ



Q:その朝子を『ハッシュ!』で演じた片岡礼子さんは、『二十才の微熱』以来だったかと思いますが、キャスティングにはどのような経緯があったのでしょうか。


橋口:片岡は『二十才の微熱』でデビューして、袴田(吉彦)と共に売れましたね。デビューから一緒ですから親心みたいなものもあって、いい女優だから主演女優賞を獲らせたいなと。片岡は一見ガサツなんだけれども強いパッションを持っている。そこがこの朝子にピッタリだった。当て書きみたいな感じでしたね。それで片岡に主演女優賞を獲らせようと、この『ハッシュ!』をオファーしました。本人も相当入れ込んでやったと思いますよ。


田辺(誠一)くんとも因縁がありましてね。彼はちょうど『二十才の微熱』の頃にメンズノンノのモデルでデビューしていたんです。実はその時に主人公役でオファーしているのですが、マネージャーから「ホモは嫌だ」って断られた。本人は否定してますけどね(笑)。その後紹介してくださる方がいたので食事をして、「当時オファーしたんだけど、ホモは嫌だって言われたんだよ」と伝えたら、「いや、僕そんなこと言ってません!」と(笑)。そうやって話をしてみると、すごくバランス感覚があって頭が良い。主人公の勝裕そのものだったんです。クセがある人と一緒にいても絶対にぶつからないような立ち位置へスッと移動する。そんな人なんです。「なんだ、勝裕そのままじゃん」と。


高橋和也くんは『渚のシンドバッド』で初めてご一緒して、音楽をやっていただいたところからの付き合い。3人ともいいバランスでしたね。他のベテラン俳優陣も、とてもいいバランスでやってくださいました。



『ハッシュ!』©2001 SIGLO


Q:撮影にあたっては、片岡さんなりの朝子を作ってこられていたかと思いますが、現場ではどのようなやり取りがありましたか。


橋口:長回しのところで朝子が言う「私は二人と出会ってこれからの人生やっていきたいと思った。掃除したり洗濯したり、誰かと手を繋いだり笑ったり、そういうことがしたいと思ったんです」というセリフは、シナリオとしてはあんまりいいセリフではない。でもこの朝子はそんなに頭のいい女じゃないわけでね。気の利いた単語を持ってきて、それで誰かを説得するなんてことは出来ない女なんですよ。でもそんな学のないような女が「私はもう一度人生をクリエイトし直したいんです」という意味合いのことを彼女なりの少ないボキャブラリーで一生懸命言っている。そういう切迫した状態なんですね。そのシーンを「あのセリフは…」と言って、批判する先輩の映画監督もいました。そのときも今と同じことを言いましたけどね(笑)。あのシーンは片岡のアドリブは入っていません。だけど、「あのぅ…、私ぃ…」って言ってるでしょ。だから「この人一生懸命なんだな」ということが本当に伝わるんです。


逆に、自分で作って持ってきたといえば、秋野暢子さんですね。そのシーンは3日間の撮影だったんです。ロケセットの下を控室として借りていて、そこに「おはようございます」と僕が朝の挨拶に行ったら、秋野さんに「監督、今日やっちゃうでしょ?」って開口一番に言われて…。今日はリハーサルで、明日が撮影、3日目が予備日ってことになっていたので、「いや、ちょっと…」と濁していたら、秋野さんが「私ね、この女(朝子)に言いたいことあるんですよ」と言い出した。あのシーンでは秋野さん演じる義姉の容子が「あなたは母親になれません」「子ども産むの痛いよ、体の裏からめくれるみたいに痛いよ」と朝子に話すのですが、あれはもう秋野さんの肉声なんです。秋野さん自身、苦労して子どもを産んでらっしゃるから、朝子が本当に許せなかったらしい(笑)。「なに言ってんの、子どもを産むってそういうことじゃないよ!と、この女に私は言いたい」と。それで実際にそのセリフを言われたんです。あのシーンを撮っていたとき、僕はもう鳥肌が立つような感じでした。引きで撮っているから顔はあまり映ってないのですが、本当に緊張感マックスでしたね。片岡もそれに答えて「私は…」って言葉足らずながらも話していく。それが本当によく出たシーンだったと思います。


当日はリハーサルだけのはずだったのに、現場に行ったら役者さんはもうみんな出来上がっちゃってる。リハーサルを始めたら、カメラも据えるし撮り始めるしかなくなった。もう途中で止められない。それで一気にあの長回しのところまでやることになったんです。11月頃の撮影だったので夕方になるとスズムシが鳴き始めた。すると録音部が「もうスズムシが鳴いてるから今日は終わりだ」なんて言い始めて…。まだ僕も舐められていたんですね。でもここで止めるわけにいかなかったので、「やっちゃいましょう」と。それであの一連のシーンを1日で一気に撮ったんです。




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