1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『時には懺悔を』中島哲也監督 観客の心に何を残せるか【Director’s Interview Vol.583】
『時には懺悔を』中島哲也監督 観客の心に何を残せるか【Director’s Interview Vol.583】

『時には懺悔を』中島哲也監督 観客の心に何を残せるか【Director’s Interview Vol.583】

PAGES


中島哲也監督の最新作『時には懺悔を』が、8月28日(金)より全国公開される。本作は、ある探偵が殺された事件を皮切りに、過去に傷を持つ大人たちと、重い障がいのある少年・新との交錯を描く重厚なヒューマンドラマだ。主人公の探偵・佐竹を西島秀俊が演じるほか、満島ひかり、黒木華、宮藤官九郎、柴咲コウ、佐藤二朗、そして役所広司ら、日本映画界を牽引する豪華キャストが集結。打海文三が94年に発表した同名小説を基に、サスペンスや探偵ノワールの要素を内包しつつ、綺麗事ではない人間の「本音と葛藤」がスクリーンに焼き付けられている。


中島哲也監督はいかにして『時には懺悔を』を作り上げたのか。話を伺った。



『時には懺悔を』あらすじ

探偵がひとり、殺された。「死んだほうがマシな人間」と呼ばれた男・米本(佐藤二朗)。調査することになったのは、元同僚の一匹狼・佐竹(西島秀俊)と、助手で修行中の聡子(満島ひかり)。調べを進めるうちに、9年前に起こった新生児誘拐事件にたどり着く─。殺された米本が死の間際に調査していたのは、9年前に失踪し今は父親の明野(宮藤官九郎)と二人で暮らす、重い障がいのある少年・新。過去に傷つき、誰かを傷つけ、孤独に彷徨う大人たちが出会った「新」という小さな命。家族から目を背けた男、娘に捨てられた女、子を生きる糧にした男、産んだ子を愛せなかった女。「生きているのが奇跡」と言われたそのひとつの小さな命が、逃げ場のない現実にもがき苦しむ大人たちの心を動かしていく─。



今回は動画版インタビューも公開! あわせてお楽しみください!



Index


原作からの改変、映画としてのドライブ感



Q:原作を初めて読んだ印象はいかがでしたか。


中島:描かれている人間ドラマがものすごく刺さるなと。誘拐事件があり、その誘拐された子供が障がい児だった。誘拐された夫婦にも様々な思いがあり、誘拐した男にもまた別の思いがある。そして、誘拐した男がその障がい児をどうしたのか。そこがすごく自然に描かれていました。


また、それを捜査する探偵の佐竹や探偵見習いの聡子、そして米本という探偵らが、事件に関わりながら複雑に人間模様を奏でている。誰か1人が突出しているわけではなく、誰かが誰かに影響を与え、誰かが誰かに傷つけられるという関係性が、見事に描かれていました。自分にそういう力があるかわかりませんが、ぜひ映画化したいと思いました。


Q:映画化にあたりどこから着手されたのでしょうか。


中島:この「時には懺悔を」という物語を多くの人に届けるためにはどう改変すればいいか、シナリオ段階で考えていきました。その改変の方向性については、わりとすぐに浮かびましたね。これはもう、登場人物を少なくするしかないんです。原作にはいろんな登場人物が出てきます。映画にもたくさん登場しますが、原作はそれ以上に多いんです。



『時には懺悔を』©2026 映画「時には懺悔を」製作委員会


Q:改変にあたり、佐竹に障がいのある子どもがいたという設定変更は大きかったかと思いますが、そこに至った理由を教えてください。


中島:原作では、佐竹の友人家族に障がい児がいるという設定だったのですが、映画ではそこまで描いている暇はない。佐竹自身が捜査をする中で、自分の過去の傷と向き合わざるを得ない状況になっていく方が、映画としてのドライブ感があるなと。佐竹に障がいのある子がいて、その子が亡くなってしまった。奥さんもそのことが傷になっていて、家庭では娘とも距離が離れていく。そうした現実を抱えた佐竹が、この事件に向き合ったらどうなるか。そのくらいシンプルにした方がいいと考えました。


Q:生きることの意味を問う“重い”テーマの作品ですが、原作も映画も探偵ノワールの雰囲気が全編を通して漂っています。サスペンスとしての“面白さ”もしっかりと入っているのが意外でした。


中島:元々の原作が探偵シリーズですから。ベースとして、いわゆるノワールやミステリーのテイストは原作にも備わっています。ただ、原作よりはその要素を相当カットしていると思います。


Q:そこのバランスを取るところで留意されたことはありましたか。


中島:いや、特にはなかったですね。原作以上に掘り下げて描いている部分もありますから。明野と新君の間に、ある種のつながりがだんだん芽生えていく過程などは、おそらく原作には書かれていない部分です。そういう要素は丁寧に描かなければいけないと思いました。原作より膨らませたり足したりしている部分もあれば、削っている部分もある。自分の中ではバランスを取ったつもりです。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『時には懺悔を』中島哲也監督 観客の心に何を残せるか【Director’s Interview Vol.583】