14〜15歳の初期衝動
Q:3世代にわたる女性が描かれますが、彼女たちの日常やディテールの描き込みはどのようにされたのでしょうか。
沖田:そもそも「ものをつくる話」とするなら、女性の方がいいような気がしていたんです。女性監督や女性の感性に対して特別な感じを抱いていて、自分には絶対できない憧れみたいなものが僕にあるのかもしれません。
女性像の描き方については、そもそも僕は男性ですし、55歳の飯島里子のことなどは年齢的にもまだ経験していないこともある。でも、35歳の西田沙都子は、自分が経験してきたことをまだ覚えている年代だったし、身の回りの人たちにも共感する部分はありました。「こういう人いるよな」と面白がって書けた気がします。15歳の中井聡子については、おっさんみたいな中学生をおっさんが考えるという感じでした(笑)。今の中学生をリアルに描く必要もないかなと思い、一人の女性に見えてくるなら昭和の雰囲気がしてもいいかなと。
55歳の飯島里子については、「グランマ・モーゼス」というおばあちゃんになってから絵描きになった画家の個展を見に行き、彼女の画集を見ていて「あ、飯島里子っぽいな」と。以前撮った『おらおらでひとりいぐも』(20)の原作者の若竹千佐子さんも、還暦を超えてから芥川賞を獲った方です。そこまで上手くいくのはすごいことですが、内容が良かれ悪かれ何かを書きたいと思う人はいるだろうなと。そこは不思議な共感がありましたね。自分でも書いていてわかるなと。わからないけど(笑)わかるなみたいな。

『さとこはいつも』©2026 「さとこはいつも」製作委員会
Q:15歳の中井聡子について、演じた姫野花春さんとはどんなお話をされましたか。
沖田:中井聡子に対しては、「初期衝動」みたいなイメージを持って描いていました。大体14〜15歳ぐらいの時期って、劇中の学校の先生など、周りから何かしらの影響を受けたりすることが誰しもあると思うんです。僕自身も14〜15歳の時に、友だちとビデオで遊び半分で撮り始めた映画があって。だから、姫野さんにはそれを見せました。内容はつまらないんですけどね(笑)。『カメラ』という短編で、僕自身がおじいちゃんの役をやり、着物を着てカメラを愛でているのだけど、そのカメラを売りに出さなきゃいけないという謎の話。「これは初期衝動だな」と思ったので、聡子もこういう感覚なのかなと思いながら伝えていました。
Q:中学生のさとこを演じた姫野花春さんの魅力が炸裂していますが、姫野さんが「自分の映画に似合う」と思った理由を教えてください。
沖田:庶民的で少し可愛らしくて、少し毒もあって愛嬌のある感じが、自分の映画の女性像と合うんですよね。姫野さんは本当にそんな感じでした。オーディションで結構な人数とお会いしたんですが、「お、いいのがいるぞ」みたいな感じでしたね(笑)。
Q:姫野さん自身が持っているポテンシャルはありつつも、現場で沖田さんが引き出すものもあるかと思います。撮影現場で何かお話はされましたか。
沖田:もし自分が14〜15歳で急に映画に出ろと言われて、しかも有村架純さんと石田ひかりさんと3人でとなると、多分まともじゃいられないと思うんです。でも彼女は自分のことを信じていると思うし、「楽しんでびっくりさせてやれ」と思うはずだと。だから、そういう場を作れればいいだけで。あまり窮屈な思いをさせないためのロケ場所を用意したりして、「あとはお願いします」と言える状況だけは頑張って作りました。現場ではあまり細かい話はしなかったですね。